REPORT/INTERVIEW

  • ART AleRT SAPPORO 編集部 マンスリーピックアップ 2018年2月

    2月の札幌といえば全国的に有名なのがさっぽろ雪まつり。一時期は地元民はなかなか足を運ばないイベントになっていましたが、近年は雪の白さを利用した大規模なプロジェクションマッピングや、大雪像を舞台にしてパフォーマンスを行っていたりと地元民も楽しめるイベントへと変貌を遂げつつあります。個人的には世界中の人が参加する国際雪像コンクールが毎回シュールで楽しみです。そんな感じで編集部のうちの1人が独断と偏見で気になるイベントを紹介するこのシリーズ。今回は雪まつりのご近所特集みたいなかんじで集めてみました。2月の札幌は雪まつりだけではないんです。(文:カジタシノブ)

     

    開催中~2月11日(日) 札幌市北3条広場「アカプラ」
    −雪と光のプロジェクト−さっぽろユキテラス2018

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1447

    北海道庁赤レンガ庁舎(北海道庁旧本庁舎)前の道路を2014年に広場としてリニューアルした通称アカプラ。ここでは毎年雪まつり期間中に雪と光をモチーフにアーティストによる札幌ならではの作品展開をする「さっぽろユキテラス」を実施しています。4回目となる今回は体験型の仕掛けが施された雪山や、かまくら内での作品展示のほか、夜には光のバルーンなど雪で覆われた世界を存分に体験できる作品が数々並ぶようです。氷で作られたアイスバーも夜にはオープン。雪まつり会場である大通公園からも近いので合わせて足を運ぶのに最適です。寒かったら札幌駅前通地下歩行空間(通称チカホ)を利用して行けばほとんど外を歩かずに2会場を行き来できます。

    (2月7日追記)
    2月25日まで18:30~20:30赤れんが庁舎外壁を利用したプロジェクションマッピングKAMORI Wonder Lightsが開催されており、ユキテラスとともに楽しむことができます。実際に見てきましたが作品の長さ(12分)、音響の良さ、映像の素晴らしさは雪まつり会場で多数開催されているプロジェクションマッピングよりも素晴らしく(個人的意見です)、足を運ぶ価値があります。

    開催中~2月12日(月) 札幌市資料館
    さっぽろ垂氷(たるひ)まつり2018

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1426

    さっぽろ雪まつり会場である大通公園の西端にある歴史的建造物「札幌市資料館」を会場に、こちらも雪まつり期間中に実施される「つらら」をフューチャーしたイベント。3年に1度開催の札幌国際芸術祭から派生したSIAFラボが手がけるつららをテーマにした展覧会で、今年3回目を迎えます。資料館入り口には昨年よりさらに精度が上がった回転式巨大つらら造形マシンや、室内には曲がりくねったつららを人工的に作るマシンなどが展示。北国でなければ見ることができないつららを多角的に楽しむことができます。実際に採取したつららを3Dスキャンしたグッズの販売や制作ワークショップも。夜には入り口の回転式巨大つらら造形マシンがライトアップされていて、なんだか幻想的な雰囲気に。雪とはまた違った北国の象徴であるつらら。雪像とともに楽しめそうです。

     

    開催中~3月2日(金) 北海道文化財団アートスペース
    磯 優子 個展 「私という重なり」
    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1383

    こちらも雪まつりの会場である大通公園のすぐとなり、北海道文化財団のアートスペースで開催されている磯優子さんの個展。磯さんは個人的にとても注目している作家さんの1人。とりあえず札幌から10人平面作家選べ!って言われたら今なら絶対選びたい。版画とCGを駆使してシンプルで洗練された線で構成されながら多彩な表情と肉体を見せてくれる女性たちを描く作家さん。CGだけではないからこそ感じられる柔らかな質感も実物を是非目にしていただきたい。磯さんは昨年は宮の森美術館から発信されたアートとカフェを楽しむ円山宮の森散策mapのデザインを手がけるなどデザイナーとしても活躍。また3月7日から東京の3331で開催される3331ART FAIRにも出品予定などすでに活躍の幅がすごい勢いで増えてらっしゃる様子。会場である北海道文化財団アートスペースが平日17時まで、しかも土日祝日は閉まっているというなかなか狭き門ですが、タイミングが合えば是非。

     

    2月7日(水)~2月12日(月) 教育文化会館小ホール
    札幌演劇シーズン2018冬 レパートリー作品 弦巻楽団『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1374

    もうしつこいですが、こちらも雪まつりの会場である大通公園のすぐそば(といっても大通公園は1〜13丁目までありますが)、教育文化会館で開催される演劇作品。過去に札幌で上演された数々の作品の中から優れたものだけを選び1ヶ月間に5作品上演する企画札幌演劇シーズン。年2回開催されるこのイベントは昨年冬から、演劇シーズンで上演したものの中から厳選した作品を再度上演する「レパートリー作品」という枠を設立。今回のレパートリー作品は以前若手演出家コンクール2014で最優秀賞を受賞した際にインタビューにも出演いただいた弦巻啓太さん率いる弦巻楽団による『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』が上演されます。恋愛を幻想としか思わないシェイクスピア専門の大学教授がラジオの声に恋をしちゃって大暴走するラブコメディ。過去のレパートリー作品も演劇初見の人でも楽しめると好評なようなので、今回も要注目です。公演特設サイトではより詳しい情報もご覧いただけます。

     

    2月15日(木)・16日(金) PROVO
    川上未映子×マームとジプシー MUM&GYPSY 10th Anniversary Tour vol.2 「みえるわ」​

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1417

    東京ではチケットがほとんど手に入らないほどの人気団体である演劇団体マームとジプシー。率いる藤田貴大さんは北海道伊達市出身。昨年札幌国際芸術祭2017で行われた企画「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」に演出協力として参加(同企画コンダクターの大友良英さんとの対談記事)。また同時期に10周年第1弾ツアーとして札幌でも初めて公演が行われました。今回の10周年第2弾ツアーは小説家・川上未映子さんとの共作。書き下ろしを含む複数の詩を演劇として表現するとのこと。2013年から続く川上未映子氏とマームとジプシーの新たな表現を見られる貴重な機会です。と思って今見たらチケットソールドアウトでした。気になった方は今後札幌で公演がある時は早めにご購入を。公演の前日である2月14日には先程ご紹介した北海道文化財団アートスペースにて藤田貴大さんと俳優の青柳いずみさんを迎えてのトークが開催とのこと(詳細)。限定30名ですがまだ発表されたばかりですので気になる方はチャンスです。

     

     

     

    というわけでさっぽろ雪まつり会場を中心にご紹介した今回。とはいえ2月は雪まつり期間以外にも、札幌中心部でなくとも様々なイベントが開催されています。是非ART AleRT SAPPOROでチェックしてみてください。また、あまりART AleRTには掲載されていませんが2月は卒業制作展シーズンでもありますので若い力を見に行くのも一興です。学校の関係者の方は是非開催情報お送りください!(イベント情報提供はこちらから

  • ー乳清のような作品をつくりたいー 「ホエイ」プロデューサー河村竜也さんに聞く

    2016年のTGR札幌劇場祭で大賞を受賞し、その受賞作『珈琲法要』で札幌演劇シーズン2018-冬に道外劇団として初めて参加する「ホエイ」。

    江戸末期に北海道で起きた津軽藩士の大量殉難事件を描いた『珈琲法要』、昭和新山誕生により消滅した集落とそこに暮らす人々の生活を描いた『麦とクシャミ』、そして、ダムの底に沈んだ町「大夕張」を描いた新作『郷愁の丘ロマントピア』。

    東京の劇団でありながら、北海道を舞台にした作品を多く手掛けている「ホエイ」のプロデューサー河村竜也さんにお話しを伺いました。

    『珈琲法要』©NagareTanaka 2015年

     


    ーまず、劇団について教えてください。所属メンバーは3名とのことですが。

    はい。プロデューサーの私(河村)、作・演出の山田百次(やまだ ももじ)、制作の赤刎千久子(あかばね ちくこ)の3名です。

     

    ー劇団としてはちょっと少ないように感じますが。

    こんなことをいうのもなんですが、僕は日本の劇団制度にあまり明るい未来を描けていません。作・演出が主宰を兼任する劇団が多いと思いますが、劇団はステップアップしていく過程が実は一番大変なんです。劇団のガバナンス(*)を維持することと、作品の質を高めること、その両方を芸術家がやるのは、いまの時代、よほどのカリスマか強権でない限り厳しいだろうと思うんです。なので、権限を分けて、最小限の人数にとどめています。

    *ガバナンス=集団の運営管理

     

    ー先日まで「青年団リンク ホエイ」でしたが、今回から「ホエイ」になった経緯と「青年団リンク」という仕組みについて教えてください。

    私は「ホエイ」のプロデューサーであり、青年団(*)の劇団員でもあります。
    青年団の劇団員は誰でも公演を企画立案することができて、 企画が通れば若手自主企画〇〇企画として活動をスタートさせることができるんです。私の場合は「河村企画」でした。

    そこで一定の評価を得ると「青年団若手自主企画」からカテゴリーが1つ上がり「青年団リンク」を名乗ることができます。また、活動するためのカンパニー名をつけることも出来ます。やがてはその「青年団リンク」を卒業し、ひとつの劇団として独立します。松井周さんの「サンプル」や、柴幸男さんの「ままごと」も「青年団リンク」からの卒業組です。

    私の場合はそれが「ホエイ」だったので、「青年団リンク ホエイ」として活動していました。いずれも、こまばアゴラ劇場(*)から公演支援金をもらい自主的に運営します。公の助成金を獲得するためのノウハウも、この流れの中で学ぶことができます。

    こまばアゴラ劇場には、実際に公演を行う劇場の他に、青年団をはじめとする俳優やスタッフ、稽古場、そして何よりも支援会員(*)がいるので、潤沢な環境で創作に集中し、発表することができるんです。日本随一の育成システムだと思います。

    私たちは、2013年に若手自主企画「河村企画」として発足し、「青年団リンク ホエイ」を経て、今年1月、青年団から独立しました。札幌での『珈琲法要』再演が、独立後はじめてのホエイ公演となります。

    *青年団=1983年旗揚げ。日本の演劇界に多大な影響を与えた平田オリザ(劇作家・演出家)主宰の劇団
    *こまばアゴラ劇場=劇団青年団が運営している小劇場。平田オリザが支配人兼芸術監督を務めている
    *支援会員=年会費で劇場や劇団をサポートする支援制度。特典としてアゴラ劇場の主催・提携・連携公演などを観劇することができるため、集客面でのサポートにも繋がっている

    『珈琲法要』(C)NagareTanaka 2015年


    ーなるほど。劇団運営を知るためには素晴らしい仕組みですね。なぜ所属している劇団とは別に「ホエイ」を作ろうと思ったんですか?名前の由来も教えてください。

    こまばアゴラ劇場は、以前「サミット」という地域の若手カンパニーを東京に紹介するフェスティバルを運営していました。チェルフィッチュの岡田さんや、KUNIOの杉原君がディレクターをしていて、山田百次が主宰している「劇団野の上」もアゴラ劇場で上演しました。「野の上」は青森を拠点に活動している劇団です。山田自身は、その頃すでに関東に引っ越していたのですが、「野の上」の公演をするときは青森に戻っていました。サミットでも紹介され、東京でも少しずつ認知され、青森だけでなく東京にも活動の場を広げたい、そう思っている時期でした。

    私は青年団員なので、自分の企画公演ができます。山田の作品に関心があったし、自分が加わることでもっと作品を良くすることができるというイメージもありました。環境面で苦労しているのを見て、彼を誘い、私がプロデュース、彼が作・演出という形で若手自主企画「河村企画」を始めたんです。おかげさまで2013年に創った一作目の『珈琲法要』がヒットし、翌年すぐに昇格が決まって、カンパニー名を考えなければいけなくなりました。

    「ホエイ」は、ヨーグルトの上澄みやチーズをつくる時に牛乳から分離される「乳清」のことです。乳清のように「何かを生み出すときに捨てられてしまったもの」、そんな作品を作りたいと思っています。

    日本は斜陽に向かう中で、今後ますます分断が進む厳しい社会になるだろう、2014年当時、そういう強い懸念を私は抱いていました。「それなら、分断の狭間に立ち世界を描こう」という意思を込めて付けました。

     

    ー所属メンバーの3名は、それぞれ俳優としても活動なさってますが、出演者はどのように決めているんですか?

    キャスティングは全て私と山田で決めています。
    私たち自身の出演に関してはケースバイケースですね。山田が出なかったこともありますし、僕も代わりに演じてくれる俳優さんがいたら全然出なくてOK。赤刎はここぞという時に出る、という感じです(笑)

    客演(*)を呼ぶとその分コストもかかりますし、「やっぱり二人とも出ている作品がいい」と言ってくれるお客さんもいます。ただ、私と山田が二人とも出演してしまうと、特に作品の仕上げのところで客観的に見るのが難しくなってくるので、最近は演出助手をつけたり、ビデオを撮って後で検証できるようにしたり、稽古場では客観性として俳優の意見を積極的に取り入れています。やはり、話すことで一人一人がどういうシーンを作ろうとしているのか、イメージのどこにズレがあるのかが明らかになってくるんです。根気と高度なコミュニケーションスキルが必要とされる作業ですが、とても重要だと思うようになりました。

    イメージと客観性を共有して、俳優が自分自身を演出する、というところを目標の最低ラインにしています。その作業に耐えられる俳優かどうかが、私たちのキャスティングでは大事な点になっているんだと思います。

    順番は、企画立案、登場人物、キャスティング、プロット(*)、執筆、です。
    基本的には役に合わせてキャスティングしていき、その流れで「じゃあこの役は山田がやるか?やらないとしたら…」などを話していきます。

    *客演=劇団に所属している俳優以外の出演者
    *プロット=台本作成前に行う物語のおおよその流れを決める作業


    ー新作を含めると劇団の公演全6作品中3作品が北海道を舞台にした作品ですが、北海道を意識した理由は?

    北海道の、いつ、どこを切り取っても背景には日本という国が抱えるジレンマや問題が浮かび上がってきます。北海道には、日本の近代化におけるすべてが濃縮されていると思います。日本の近代化とはなんだったのか、何を目指して、どこに来てしまったのか、根気のいるこの問いを続けない限り、この先どこにもいけないだろうと考えているので、まずは北海道から始めることにしました。


    ー3つの北海道作品について、それぞれ創作のきっかけを聞かせてください。

    『珈琲法要』は、もともと山田が創作していた20分ほどの短編戯曲をもとにリメイクした作品です。1807〜8年にかけて、宗谷と斜里に従軍した津軽藩士たちの話ですが、兵站を軽視した行軍や、面子のための情報隠蔽など、近現代に通じる普遍的なテーマだと思いました。

    『麦とクシャミ』は、昭和新山の生成により消滅した壮瞥の集落の話です。昭和新山は太平洋戦争の勃興に合わせて山が隆起し始め、戦争の終息とともに火山活動も終えた、なんとも不思議な成り立ちの火山です。国策による戦争と、火山生成という天変地異、この二つの被害を一度に被った集落の人々はどう生きたのだろう、その関心が創作意欲をかきたてました。もちろん、遠景には原発と津波という二重の災害を被った福島のイメージもありました。

    『郷愁の丘ロマントピア』は、現代の夕張市の話です。夕張の中でも「大夕張」という、いまはダムの底に沈んでなくなってしまった町、そこで暮らした元炭鉱夫たちを描いています。かつてそこに栄えた町があったという強烈な残滓と、弔われることなくまだそこに漂っている強い想い、実際に夕張で感じた体験をそのまま作品にしています。その寂しさや、やるせなさは、現代の日本で私たちが一番受け入れなければならないものなのではないかと思い、三部作の三部目にこの作品を創りました。

    『麦とクシャミ』2016年

     

    ー東京と北海道とでは、上演する時の違いはありますか?観客の反応の違いとか。

    うーん、どうでしょう…。
    あまりないと思いますけど、北海道の人たちは自分たちの土地の問題を話さない、という風潮があると聞いたことがあります。そういう意味で、自分たちのある種タブーに(外者に)触れられた、という緊張感が客席に多少あるのかな、とは思います。気がするだけで、実際はわかりません。


    ー『珈琲法要』ではアイヌ女性も描かれていますね。難しくデリケートな作業だったと思いますが、実際の稽古などはいかがでしたか?

    東京の八重洲にあるアイヌ文化交流センターに資料収集に行ったり、ムックリ製作のワークショップに行ったりしました。デリケートな問題ですが、デリケートになりすぎて保守的になりすぎないように気をつけました。どの人間もフラットに、自在に存在できるのが演劇の面白み、というか力だと思うので、そこは存分に楽しみながら創作しました。

    『珈琲法要』©NagareTanaka 2015年

     

    ー『珈琲法要』が北海道で評価され、道外劇団としては初めての演劇シーズン参加となりますが、意気込みなどあれば聞かせてください。

    敷居をまたぐような格好で、どちらかといえば恐縮しています。
    とにかく作品をよりブラッシュアップしてお届けしたいという思い、それに尽きます。

     

    ーところで、河村さんはどんなきっかけで演劇を始めたんですか?

    私は広島出身なんですが、18歳の時に地元で青年団の『ソウル市民』という作品を見たのがきっかけです。1909年のソウルが目の前にありありと現れていく情景に、魂を吸いとられるような感覚を覚えました。

     

    ーその作品を観る前、演劇との関わりはありましたか?

    大学に入ってすぐの新入生歓迎イベントで演劇部のプレゼンがあって、一人の俳優が舞台上のベンチにただ横たわる、みたいなパフォーマンスがあったんです。それは、ピーター・ブルック的に言えば「十分な演劇」でした。で、「面白いな」と思って演劇部に入っちゃったんです(笑)

    でも、1998年当時、その演劇部で行われていたのは東京の潮流からは5〜10年くらい遅れていたんですね。どの地方でもそうだと思いますが、「真似事みたいな演劇」で、これは違うなと思って離れました。ちょうどパソコンとデジタルビデオカメラが普及して、誰でも自主映画が撮れるようになり始めた最初の時代だったこともあり、映画の方に惹かれていきました。

    そんな矢先、広島市現代美術館で演劇がおこなわれる、という情報が流れてきて、気になって観に行ったんです。それが青年団の『ソウル市民』です。その時、ワークショップにも参加したんですが、演劇部で感じていた演劇に対する違和感やダサさを言い当ててくれるような体験でした。

    『ソウル市民』©TsukasaAoki 1998年

     

    ーその後、青年団に入るために上京したんですか?『ソウル市民』を観てから何年後ですか?

    2002年、大学卒業後すぐに上京し、下積みとも言えないうだつの上がらない生活を経て、2005年に入団しました。『ソウル市民』との出会いから7年後のことですね。

     

    ー青年団に入ってから、その作品『ソウル市民』の再演に出演していますよね?キャスティングされた時はどんな気持ちでしたか?

    もちろん嬉しかったし、何かに到達したと言う感慨もありました。稽古は夢の世界に入って行くような興奮さえありました。だけど、18歳の時にみた『ソウル市民』からもうすでに10年近く経っていて、作品を自分の力でアップデートしなければいけないのだと気付き、当時はまだまだ力及ばず、やり切れなさが残った悔しい体験でした。でも、そうしてオリザさんには様々な環境を与えてもらい、育ててもらったと感謝しています。

     

    ー河村さんにとって演劇の魅力とは何ですか?

    人間は不完全で、その不完全さを補うために想像力があったり、家族や友達がいたりします。演劇は、観客の想像力に多くを委ねる表現です。演劇の最低条件は、言うなれば不完全であることともいえます。その不完全なものを、舞台上と客席で補い合おうとするところに、人間らしい営みとしての魅力があるんじゃないでしょうか。

    『郷愁の丘ロマントピア』©NagareTanaka 2018年

     


    インタビュー:佐々木雅子
    写真提供:ホエイ

    ホエイ HP
    https://whey-theater.tumblr.com/

    <ホエイ札幌公演情報>
    札幌演劇シーズン2018-冬 『珈琲法要』

    【作・演出】
    山田百次

    【出 演】
    河村竜也(ホエイ/青年団)
    山田百次(ホエイ/劇団野の上)
    菊池佳南(青年団/うさぎストライプ)

    【日時】
    1/27(土)14:00 、18:00
    1/28(日)14:00
    1/29(月)19:00
    1/30(火)19:00
    1/31(水)14:00
    2/01(木)14:00

    【会場】
    シアターZOO(中央区南11条西1丁目ファミール中島公園B1F)

    【料金】
    一般 3,000円、学生 1,500円

    お問合せなど公演詳細情報はこちらをご参照ください
    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1372

  • ART AleRT SAPPORO 編集部 マンスリーピックアップ 2018年1月

    2018年、あけましておめでとうございます!AA編集部マンスリーピックアップ、年明け一発目をお届けします。編集部の1人が独断と偏見で気になるイベントを紹介するこのシリーズでは、登録されているイベントの中から1ヶ月間のあいだに筆者が「見たい!」と思うイベントを日付順に紹介していきます。おでかけの際、ちょっと何か見に行きたい気分、そんなときにぜひ使ってみてください。(文:山本曜子)

     

    1月12日(金)-28日(日) ギャラリー門馬&ANNEX

    ノーザンアーツ コラボレーション -睦月-

    北欧と北海道とを結び、それぞれの作家を紹介する独自のキュレーションを2012年から手がけている多田浩二さん。筆者は彼の主催する展覧会を楽しみにしています。多田さんの選ぶ北欧在住作家の作品に、いつも新鮮なインパクトを受けるのがその理由。今回はフィンランド作家7名、北海道作家7名、合わせて14名ものアーティストの作品が一堂に会する、錚々たるグループ展。会場となる旭ヶ丘のギャラリー門馬で、北欧や札幌が美しさを増す厳冬の雪景色をバックに、さまざまな表現や作品との出会いが待っています。同じ北国にあって共通する感覚、また異なる点を探してみるのも楽しそう。初日12日(金)18時からはオープニングパーティーが開催されるので、こちらも足を運んでみてはいかがでしょうか。

     

    1月20日(土)-28(日) 生活支援型文化施設コンカリーニョ

    イレブンナイン「サクラダファミリー」

    年2回夏と冬、札幌の演劇モードが全開になる「札幌演劇シーズン2018-冬」は今年も1月20日にスタートします。一定の期間に1つの劇団がそれぞれ人気の1作品を再演し続けるという、演劇好きの人はもちろん、初めて演劇に触れる方にも絶好の機会。今回は札幌が誇る5つの劇団のレパートリー作品を市内各所で体験できます。そこでまさに演劇初心者の筆者が気になったのが、イレブンナインの名作「サクラダファミリー」。タイトルにクスッときて内容を追うと、頑固で気難しく横暴な上にバツ6で家族中の嫌われ者、という猛者のオジイさんが、2017年の大晦日に7人の妻と7人の子どもたちを集めて、自身の秘密を暴露する…この筋書きのあまりの不穏さと興味深さに、つい舞台をのぞきたい心持ちに。先月のコラムでカジタさんが「エンターテイメントの名手で実力派俳優」と評していた納谷真大さんの存在も気になるところ。家族とは、個とは、血の繋がりとは…普遍的かつ奥の深い命題に触れつつ、とにかくライブ感を味わいながら鑑賞してみたい作品です。

    札幌演劇シーズン2018-冬 公式サイト

     

    1月20日(土)-2月24日(土) CAI02

    ミヤギフトシ「The Dreams That Have Faded/いなくなってしまった人たちのこと」

    沖縄出身のミヤギフトシさんによる北海道初の個展。彼は自身の記憶や体験に向き合いながら、国籍や人種、アイデンティティといった主題を落とし込んだ作品で知られるアーティストです。2016年のあいちトリエンナーレ「交わる水-邂逅する北海道/沖縄」で発表した北海道・オホーツク海を始めとした海にまつわる5つの映像インスタレーションを再構成した作品や写真が展示されます。注目したいのは、ミヤギさんが北海道を題材にするにあたって手がかりにした本が『ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語』(津島佑子著)だったということ。かつて網走にもその一部の人々が居住していた樺太の少数民族ウィルタを軸にした物語を通して、ミヤギさんが北海道という土地に残る声を聴きとり、伝えようとしたものとは?北海道がもつ歴史の一面を垣間見るという意味でも、個人的に見逃せない展覧会です。

    蛇足ですが、筆者は網走で今もつくられているウィルタの木偶「セワポロロ」を偏愛しています。ちょっととぼけた(失礼)表情の神様で、網走の北海道立北方民族博物館ではウィルタの人々のつくった古いセワポロロも見られます(さらに蛇足ですが、この博物館は北方民族や民具に興味のある人には絶対オススメ!)。

    また、21日(日)は北海道大学総合博物館にてミヤギフトシさんによる上映会&アーティストトークが開催されるので、詳しくはタイトルリンク先でご確認を。

     

    1月21日(日) BHFホール

    キセル「The Blue Hour」発売記念ワンマンTOUR 2018

    狸小路2丁目プラザ2.5ビルの地下に2017年オープンした劇場形式のBHFホール。ふわりと漂うような雰囲気に、しっとり聴かせるサウンドが持ち味のキセルには、こんな座席タイプのコンサートも似合っています。兄弟ならではの息のあった柔らかい声のハーモニーに、ギターやベースの生音、デジタルミュージックが織りなす世界。ここにいながらどこか遠くの風景に迷い込むような不思議な感覚は、生だからこそ味わえる一期一会の体験です。是非じっくりと身をゆだねてみて。

    ニューアルバム『The Blue Hour』特設サイト

     

    そして、おかげさまでART AleRT SAPPOROは1月15日でサイトオープンから3年目を迎えます。いつも当サイトを訪れてくれる皆さま、応援して下さる皆さま、ありがとうございます!今年も札幌の気になるイベントをどしどし発信していきますので、どうぞご利用くださいね(そして引き続きボランティア運営ゆえ物理的な応援も募集中…!新年早々恐縮ですがこちらもよかったらご覧くださいませ!)。

     

  • ART AleRT SAPPORO 編集部 マンスリーピックアップ 2017年12月

    新たにはじまった新シリーズ編集部マンスリーピックアップ。編集部のうちの1人が独断と偏見で気になるイベントを紹介するこのシリーズは、登録されているイベントの中から編集部のメンバーの1人が1ヶ月間のあいだに「見たい!」と思うイベントを日付順に紹介していきます。掲載されている情報を元に書いているので間違ってたらごめんなさい。皆さんが「何か見に行きたいな」と思ったときのちょっとした参考程度に是非お使いください。(文:カジタシノブ)

     

    開催中~12月8日(金) ペーパーショップサクマ
    札幌レトロ・グラフィックス展

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1336

    札幌の戦後あたりに作られたグラフィックを並べているだけなのかと思ったら、アプローチが全然違う。この展覧会の中心にいるのは謎の図案家M・M氏、その人物が作ったものは勿論、彼のコレクションを並べるというこの展覧会。誰だかわからない。全く想像もつかない。けどなんか気になる。展覧会を見たらわかるのだろうか。どんなものを作った人なのだろうか。考えると余計気になってくる。完全に宣伝に負けた気分なんだけど、それを知るには行くしかないんだろうなあ。会場のペーパーショップサクマさんは札幌には数少ない紙の専門店。素材好きは展覧会を観るのと同時に世の中にはどんな紙があるのか見だすと止まらないと思いますのでお時間に余裕を持って。

     

    開催中~12月10日(日) ト・オン・カフェ
    松浦シオリ展 「夢見始め」

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1359​

    札幌在住の松浦シオリさんの約1年半ぶりの個展。展覧会でお見かけする意外にも書籍の表紙やフライヤービジュアルなどイラストレーターとしても多方面で活躍している松浦さん。もしかしたら皆さん気づかないところで目にしているかもしれません。実際私も最初に観たのは書店で並ぶ本の表紙でした。(→参考) 日本画のように見えるその絵はすべてコンピューターで書かれたもの。一瞬古い絵画を観ているような錯覚を覚えますが、よく見ると現代的なモチーフやそこかしこに。今回の展示タイトル『夢見始め』は作家のこれからの夢、目標に向けた出発点にしたいとの思いが込められてるとのことなので、彼女の新しい一面が見えるのか、それとも今までのより進化した姿が見られるのか、非常に楽しみです。

     

    開催中~12月11日(月) ギャラリーレタラ
    冨田美穂展 牛のつむじ

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1366

    DMを見て「牛だなー北海道っぽいなー」と思って調べたら作家の冨田美穂さんは牛をモチーフに絵画や版画作品を作り続けている牛の作家さん。東京出身で武蔵野美術大学を卒業後、北海道で酪農に従事されているというそのキャリアの中、どの時点で牛にテーマを絞ったのでしょう。と思ったらインタビュー記事がありました。(→記事) 今年始めには第20回岡本太郎現代芸術賞にやはり牛の作品で入選。ここまで牛を見つめ描き続けている人の作品となると俄然見たい気持ちが沸き起こる。むしろ見続けてみたい。そして「牛だなあー」って思いたい。

     

    11月29日(水)~12月3日(日) OYOYO まち × アートセンター さっぽろ
    都市標本図鑑

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1368

    写真の展覧会は色々ありますが、個展などでない限りなかなか特定のテーマに絞った写真の展覧会はあまり見かけることはありません(見逃してるだけかもしれません)。そんななか路上観察系で街を撮りそれを「標本図鑑」として並べる展覧会はなんだかとても楽しそう。普段目にしている風景はいつのまにかそれが当たり前になりますが、ふと見かたを変えたりすると途端に魅力的なものに見えてきたりします。こういうのは古くは赤瀬川原平らが始めた路上観察学会や最近では写真家の大山顕さんあたりが有名でしょうか。大好物なんで楽しみです。会場であるOYOYOは12月いっぱいで建物の老朽化により惜しまれつつも閉館します。

     

    12月12日(火)~12月29日(金) ト・オン・カフェ
    jobin.個展「漂う明日」

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1363

    毎年年末にはト・オン・カフェで個展を開くjobin.さん。モビールを中心にクラフトと美術の間をさまようように表現をし続ける彼の作品は、実際に観る時間帯や、そこにいる人によっても見せる景色が変わってきます。会場のト・オン・カフェは大きな窓が設置されているのでそれがより顕著に見える展示。良く展覧会を見に行く人の中にはjobin.さんの毎年行う年末の展示を季節の風物詩のように感じている人もいるのではないでしょうか。カフェでお茶をしながらのんびり作品を観るのも一興です(展示観覧のみでの入店も可能です)

     

    12月16日(土) 札幌プラザ2.5
    変態アニメーションナイト ザ・ツアー セレブレート in 札幌

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1325

    タイトルは変態だしチラシはB級ホラー映画。その実態は一生忘れられないくらいのインパクトを残す短編アニメーションを集めた上映&トークイベント。そこで上映されるの皆が想像するテレビアニメ的なものとは全然違う。過去数回全国で巡回上映された変態アニメーションナイトですが、今回は「ザ・ツアー」と称して上映とともにMCが喋りながらのコメンタリー上映。今までは心の中でしか突っ込めなかったことを、出品作家も交えて、むしろおおやけに楽しむスペシャル回。MCを担当するのは作品世界からは想像もつかない話術を持つ水江未来さんと、新千歳空谷国際アニメーション映画祭でフェスティバルディレクターも務める土居伸彰さん

    ART AleRT SAPPOROをご覧の方に抽選で「変態アニメーションナイト ザ・ツアー セレブレート in 札幌」招待券を5名の方にプレゼント!
     
    以下の内容にてメールをお送りください。ご応募いただいた方の中から厳正なる抽選を行い、当選者を決定いたします。当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
    応募締め切り:12月4日(月)23:59必着

    (1)件名
    「変態アニメーションナイト札幌」応募

    (2)宛先メールアドレス
    ono.tmk@gmail.com [宣伝・運営]小野朋子

    (3)本文
    郵便番号・住所・氏名・電話番号・メールアドレスをご記入ください

     
    ※お送りいただいた個人情報は「変態アニメーションナイト ザ・ツアー セレブレート in 札幌」の招待券抽選以外の目的には一切使用いたしません。
    ※送り先アドレスは「変態アニメーションナイト ザ・ツアー セレブレート in 札幌」運営担当者様となります。お問い合わせがありましたら上記アドレスにお願い致します。
     
    主催:「変態アニメーションナイト ザ・ツアー セレブレート in 札幌」

     

    12月16日(土) 道新ホール
    シークレット歌劇團0931★15周年記念公演『エリザベーーート!』~本物を知りたければ本物を見るがよい~

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1343​

    一度でいいから見てみたい。そんなことを思いながらもう何年経ってしまったのか。チケットが販売後即完売、そんな噂を耳にすれども、そんな即完イベント、宣伝もそんなに見かけることない。そんなシークレット歌劇團0931が昨年から道新ホールをメイン会場とし多少チケットが出回るようになった。今調べてみたらまだチケットは買えるよう。年に1回しか公演していないので観られるチャンスもそんなにないかもしれない。まるで宝塚のような見た目で繰り出される爆笑の嵐ってどんななんだろう。気になる方はこの少ないチャンスをものにしない手はありません。

     

    12月21日(木)~12月24日(日) 生活支援型文化施設 コンカリーニョ
    コンカリーニョプロデュース企画  大人VS中高生第2弾「鰤がどーん!」

    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1351​

    1つのお話を2人の演出家が、かたや大人の俳優たち、かたや中高生たちをキャストに発表するこの企画。演劇というものがキャストはもちろんのこと演出家の手によって大きく変わるのだということがよくわかる企画です。演出にはエンターテイメントの名手で俳優としても多方面で活躍するELEVENNINESの納谷真大さんと、その表現が道内だけでなく大阪・東京でも注目を集めるintroのイトウワカナさん。脚本は演劇の楽しみ方の一翼がよくわかる企画じゃないかと思うので、「演劇を楽しんでみたい」方は是非片方だけではなく両方ご覧になってみることをお薦めします。しかし、「鰤(ぶり)がどーん!」てすごいタイトルですね。

     

     

    札幌で街の中心部にありつつ、よそではできないイベントも多く受け入れてきたOYOYOがいよいよこの12月で閉館を迎えます。ここがなくなることで行き場を失う人々がでてくるのか。新たなスポットや受け入れるスペースが誕生するのか今後に注目しています。