REPORT/INTERVIEW

  • 2つの顔を持つ柔らかな空間「十年二十年」がオープン

    2022年6月5日にオープンした『十年二十年』。手仕事で作られた工藝品を販売するショップと道外作家を中心に紹介する企画ギャラリーという2つの顔を持ったこの空間は、両方を同時に1つの空間で行っているのではなく、時期によって全く異なる場所のように空間全体を使って行われています。
    行くタイミングによってまるで違うところに来たような気分になりながらも、どこか共通する柔らかい空気感で迎え入れてくれる『十年二十年』。なぜこういったスペースを始めたのか、代表でグラフィックデザイナーの榊原直樹さんにお話を伺いました。

     

    ー「十年二十年」をはじめた経緯を教えてください。

    この物件は、5年ほど前からデザイン事務所とカメラマン事務所としてパートナーの寺島博美とともに二人でシェアしているオフィスです。
    当初から中央のスペースで、普段の仕事とは違う新しいことを始めたいと話していました。都内でギャラリーショップをしていた友人の働きかけや、陶芸作家さんたちとの出会いをきっかけに、以前から収集していた手仕事のへの熱が高まり、工藝品ショップ兼ギャラリーをはじめることにしました。

    ー「十年二十年」という名前の由来を教えてください。

    長い年月、制作工程やデザインが変わらなものは、生活の中でも飽きのこないものが多いと感じます。100年とは言わないけれど、流行に流されず10年20年とそばに置いておきたいものを扱いたいと思い命名しました。

    ー手仕事製品販売と展覧会、2つの業態としたのはなぜですか。

    生活に溶け込む工藝も好きですし、生活感と少し距離のあるアートも好きです。一つのことだけに熱中するよりも自分にとってバランスがとれるんです。

     

    ー展覧会のスタートを『青木鐵夫 | 木版画展』で始めた経緯を教えてください。

    木版画は、手仕事の温かさや美しさが感じることができ、十年二十年の構想と合っていました。版画家の青木鐵夫さんは、高校時代の恩師になります。美術の先生であり美術部の顧問でした。私はテニス部でしたが、進学のためテニス終わりに美術室に行きデッサンを教えてもらいました。
    大学時代も気にかけてくださり、最初の就職先である東京のデザイン事務所も紹介してくれました。私がデザイナーになるために大きな力添えをしてくれた方です。その頃から「ギャラリーを持つことが出来たら、最初の展示は青木先生の作品で」と考えていました。こういったことで少しでも恩返しが出来ればと思っています。

     

    ー展示・販売ともに今後どういった展開をしていく予定ですか。

    展覧会については、不定期での開催となると思いますが、北海道や札幌ではあまり知られていない作家さんを紹介していきたいです。私がグラフィックデザイナーと言うこともありますが、絵画や写真など平面の表現をされている方を中心に考えています。
    手仕事のショップは、作り手さんのもとへ足を運び、アイデアを交換しながら制作した商品を扱うことが出来たら面白いと思います。
    本業であるグラフィックデザインの仕事もあるため、ゆっくりになりますが納得出来ることを自分のペースで続けていけたらと思います。

    ー空間や什器などこだわりなどありましたらお教えください。

    什器は全て自分でデザインをして、専門の職人さんたちに造作していただきました。木材は地震での倒木や古材などの道産材を使い、ストーリーのある什器を制作しました。木こりのOut woods、木工のThreekさんにはとてもお世話になりました。
    鉄の加工をしてくれた ScBさんは制作のアドバイスなどたくさん協力していただきました。レジカウンターは側面が洗い出し仕上げで、左官職人さんが連日来て制作してくれたものです。

    ー今後どんな空間にしていきたいですか。また、どんな方たちに来ていただきたいですか。

    心地よい刺激を感じることが出来る空間にしたいです。
    大げさに言うと世界って美しいなぁとか、人生って素晴らしいなぁと少しでも感じられる場所に。手仕事やアートに興味のある方はもちろん、それは難しいものだと遠ざけている方にも来て欲しいです。

    ----

    十年二十年
    札幌市中央区南3条東1丁目メゾンRN4階
    instagram:@junen_nijunen

     

    インタビュー:カジタシノブ
    会場写真提供:寺島博美

     

     

  • 札幌テレビ塔からすぐの場所に「GALLERY CLAC」がオープン

    「GALLERY CLAC」が今週末6月11日(土)オープンします。場所は、大通公園のランドマークである札幌テレビ塔から横断歩道をわたってすぐのビル1F。ここ数年は札幌駅・大通公園近郊のギャラリーの移転・閉廊、そしてコロナの影響で街中の展示を楽しむ機会が減っていたなか、嬉しいニュースでした。着工したばかりの「GALLERY CLAC」で、オーナーの佐々木さんにお話を伺いました。

     

    ー「GALLERY CLAC」をはじめる経緯を教えてください。

    もともとは違う目的で借りていた物件でしたが、単一の色付けをするにはもったいない場所だなという気持ちがありました。 個人的に古物やアートが好きだったのと、仕事上デザイナーさんや作家さんとお仕事をする機会も多かったので、放課後のクラブ活動的な感じでそういう方々と一緒に面白いことができたらという思いからギャラリーを作ろうと思いました。 

     

    ー内装、ロゴ、企画など様々な方が関わっているとお聞きしました。どのような出会いから、依頼するに至りましたか。

    ギャラリーを作ろうと思った時に、この人と一緒にやりたいなと思った人が何人かおりまして、お声がけをさせていただきました。話をしていく中で色々と構想が膨らんでいった感じです。ロゴ周りのデザインは東京のデザイナーの小林一毅さんお願いしました。一毅さんも一緒にお仕事をしてみたいと思っていた1人でして、すごく良いタイミングでご縁をいただき依頼させていただきました。企画はチームみんなで持ち寄って、面白そうなことを形にしていけたらなと思ってます。

     

     

    ーCLACという名前の由来を教えてください。

    クラックという言葉は一般的にネガティブな印象を持つ言葉ですが、芸術の分野で言えば、『面白いアプローチ』や『斬新』というような意味あいで使われたりします。対極の意味を一つの言葉で表す面白さを感じました。木工作品などでいえば割れやひびなどのことをクラックといいます。本来それはネガティブな要素と捉えられますが、それをあえて好む人がいたり、予期していない出来栄えを美しく感じたり、良し悪しは表裏一体だと思っていまして。作る側も受け取る側も良いと思う感性は人それぞれなので、そういう感覚の違いや気づきを楽しめる場にできたらという思いもありこの屋号にしました。 

     

    ー最近は街中のギャラリーが減っています。駅からもテレビ塔からも程近いこの場所にしたのはなにか理由がありますか。

    札幌のランドマークであるテレビ塔の裏という案内のしやすさ。また創成川の遊歩道に面しており、中心部にありながら時間の流れがゆっくり感じられる場所だなと。そういう部分が文化的な活動の場に適していると思いました。またご利用いただく方にとって集客もしやすく認知もされやすい場所なので使い勝手もよいのではと考えています。

     

    ー空間や什器などこだわりなどありましたらお教えください。

    展示物の邪魔をしない空間、什器。 どのような色付けにも対応できる空間がよいなと思い極力シンプルな作りに仕上げました。
     

     

    ーグラフィックデザイナーの展示がこけらおとしですが、今後はどういった展開していく予定ですか。

    6月11日からは新林七也さんの個展。その次にはクラフト作家さんによるグループ展が控えています。 今後は何か特定のジャンルを中心にしようというのではなく、自分たちが良いと思えるものや 面白いと感じることを展開していけたらと思っています。

     

    ー今後、どんなギャラリーにしていきたいですか。

    既成概念に囚われず様々なジャンル・業界の方が情報発信できる場所にしたいです。 ここはいつも何か面白そうなことをやってる場所だなと思っていただけたらうれしいです。
     

    「こちらから色付けせず、フラットな場所にしたい」と語るオーナー。 さまざまな作品や人との出会いが刻み込まれていく「GALLERY CLAC」の今後が楽しみです。

     

    インタビュー・撮影:小島歌織
    会場写真提供:CLAC
    協力:中西洋也

  • 演劇を支える「制作」という仕事

    「制作」という職業をご存じでしょうか?
    バレエやオペラ、演劇などの舞台芸術公演、コンサート、映画など、身近にある多くの文化芸術の現場で必要不可欠な「制作」という仕事は、ジャンルごとに担う業務は様々ですが、最も長く作品に関わると言っても過言ではない重要なポジションです。
    今回は、札幌で演劇の制作者として活躍している「ラボチ」の小室明子さんにお話を伺いました。

    ー この仕事に就くきっかけを教えてください。
     もともと大学在学中に演劇を始めましたが、その頃は「制作」という仕事があることも知りませんでした。卒業後はタウン情報誌の編集の仕事をしながら細々と演劇を続け、20代半ばで上京しました。当時大好きだったある劇団の演出部文芸部オーディションというのを受けまして二次審査まで残りましたが、その後、演出部文芸部は組織されず。でもその劇団で、本職を生かして公演パンフレットの編集に携わらせていただいたり、その流れで制作のお手伝いみたいなことをしていました。その傍ら、ある演劇ユニットの制作として活動しまして、そこで基本的なことを学んだと思っています。

     その後、2006年に、小劇場演劇の制作者を支援するサイト・fringeが主催した「Producers meet Producers 2006 地域の制作者のための創造啓発ツアー」という2泊3日の勉強会に参加したのをきっかけに、札幌に帰って仕事をしようと思うようになり、2007年から札幌の劇場で働き始めました。企画公演や育成事業等々様々手がけまして、やりがいも意義も感じていましたが精神的に追い詰められて志半ばで無念の退職。2014年から「ラボチ」と言う屋号でフリーで活動しています。委託された劇団公演の制作、プロデュース公演、ワークショップ、道外カンパニーの受け入れなどを行なっています。


    ー 演劇制作の具体的な仕事内容は?
     
    団体によって、あるいは制作者によって色々だと思いますが、公演の立ち上げから終了までのあらゆることだと思っています。劇団の公演制作ということで考えると、上演を決める、劇場を借りる、予算作成・管理、スタッフの手配、キャスティング、宣伝物制作、広報、SNS管理、稽古スケジュール作成、稽古場手配、演出家と各スタッフとの打ち合わせ設定、票券管理、受付周りの準備(人員、配布物等)、ケータリング、お客様対応、公演後には出演者スタッフへのギャランティの支払い。場合によっては助成金の申請書〜報告書の作成、ツアーがあれば各地の劇場との連絡や航空券、宿の手配。演劇祭のようなものに参加するなら実行委員会などとの連絡係。といったところでしょうか。

    あとは公演までの流れの中で誰がやるか決まっていない・わからない作業は制作がやることが多いです。



    ー かなりの作業量ですが、その中で最も苦労するのはどんなことですか?その苦労が報われる瞬間は?
     演劇を見たことがない人に演劇の魅力を伝える、ということが最も苦労するしなかなか実現できないところです。理想を言えばそういう大きなことを考えていたいのですが、実際は目の前のお金のことに追われてしまっています。どこにどれだけの予算を割くか、計画通りの収入が見込めるか、見込めないときは各出演者スタッフのギャランティ以外のどこを削減していくか、予算書を睨みながら調整する毎日です。

     報われるのは、作品の質としても収支的にもいい具合に終われた時じゃないかと思います。ただ、そういうことはあまりない気がしています。制作の仕事は終わり良ければすべて良し、としてはいけないと思うので、全てにおいてすっきりと終わる、ということはなかなかないです。でも、終演後にお客様が楽しそうにしているのを見ると一瞬報われます。


    ー 最近はSNSなど様々なツールでお客様の声を目にする機会が増えましたよね。宣伝も含め、メリットが大きい印象ですが、インターネットが普及する前と比べていかがですか?
     それこそTwitterなどが流行り始めた頃は、影響力もすごく感じましたが、最近は難しいですよね。お客様も、大して面白いと思わなくても気を遣った感想をあげてくださったりしているように感じます。SNSに上がらない声をどうやって拾うかが課題だと思っています。

     紙媒体の時代は興味のない情報も目に入るような環境だったのに対して、ネットの時代は自分が興味のある情報しか目に入らない。そこをどうやって打破していくか、難しいところです。


    ー 劇団所属の制作ではなく、フリーで活動をする理由は?
     劇団に所属する、ということは全く考えたことがなかったので質問されて驚いてます。なんでだろう?色々な現場に関われる方が楽しいからかもしれません。


    ー これまでで最も印象深い作品または公演を教えてください。
     関わった公演はプロデュースした公演、依頼された公演に関わらず全て印象深いです。
    ですが、あえてあげるとすると、劇場制作時代に手がけたプロデュース公演『歯並びのきれいな女の子』。2007年の福岡との交流事業の流れで2008年に通年で北九州の飛ぶ劇場主宰の泊篤志さんの戯曲講座を行い、そこで書かれた作品をリーディング公演(*)を経てプロデュース公演(*)として上演しました。初めてのプロデュース公演だったのもあって印象深いのですが、とてもいい作品になったという達成感もありました。その戯曲講座を受けた劇作家たちのその後の活躍も含めて、いい事業だったと思っています。

     あともう一つ挙げると、柴田智之一人芝居『寿』です。劇場の仕事を辞めざるを得なくなって、鬱々としてもう札幌で演劇の仕事を続けていくことも無理かな、と思っていた時に、俳優の柴田智之から一人芝居「寿」を弘前で上演したいので手伝って欲しいと言われて、座組の仲間に入れてもらうことになりました。柴田の演劇に対する雑念のなさに初心を思い出して救われた気がしています。その後、札幌演劇シーズンでも上演し、今年2月には福岡でも公演しました。今ちょっとお休みしていますが、札幌でも稀有な才能を持つ俳優であり演出家だと思うので、『寿』は一区切りとなりましたが、次の機会も楽しみにしています。

    柴田智之一人芝居『寿』

    *リーディング公演=俳優が台本を手に持った状態で上演される公演。俳優がイスに座ったまま、朗読に近い形で行うスタイルから実際に動きを伴うスタイルまで公演によって様々な形式がある
    *プロデュース公演=プロデューサーが参加者(作家・演出家・俳優など)を提案し集めて行う公演


    ー 『寿』は素敵な作品ですよね。私も何度も拝見しました。柴田さんの次回作を楽しみにしている演劇ファンも多いのではないでしょうか。ところで、小室さんが今までに経験した「最大のピンチ!」ってどんなことですか?
     
    正直、ピンチらしいピンチは経験したことがないのですが、最近のそれっぽいことといえば昨年の弦巻楽団『センチメンタル』の大阪公演です。9月の公演時期に、大阪には台風が直撃し関西国際空港が使えなくなったのに加えて、北海道の大地震。舞台美術は宅配便で送る予定でしたが、物流大混乱のため舞台監督にハイエースに積んでフェリー+陸路で運んでもらうことになってしまい、舞台美術運搬費が予算の倍額になってしまいました。これはもう大赤字で終わってしまう、とヒリヒリしてましたが、最終的には事なきを得ました。誰も褒めてくれないですけどこのハンドリングはよくやったと自分では思っています。稽古もままならず、家族と離れるのも不安があった中で、客演(*)の皆様が楽しんで大阪公演を乗り越えてくれたことにも感謝しています。


     あと、これも昨年のことですが札幌演劇シーズンのELEVEN NINES『12人の怒れる男』は完全にキャパシティを超えてしまった感がありまして、精神的にピンチな日々でした。票券(*)を担当していましたが、5000人のお客様を相手にするというのは想像以上の出来事で、カンパニーの皆様やお客様にも随分ご迷惑をかけてしまったと反省しています。公演の二週間前くらいからは出かける支度もままならないくらいの問い合わせの電話の数で、忙しすぎて去年の7月後半から8月初めくらいの記憶があまりないです。

    *客演=劇団に所属している俳優以外の出演者
    *票券=チケット管理業務


    ー 演劇作品が上演されるまでに、どんな役割のスタッフが関わっているんですか? 
     大体公演の1〜2ヶ月前から稽古が始まり、稽古場には演出家と役者がいるのが基本です。演出助手という演出家のサポート役の人がいることもあります。稽古が始まる前から、宣伝関係は走り出します。宣伝美術をお願いするデザイナーと宣伝物について打ち合わせてチラシの作成、お客様へのダイレクトメール発送などを行います。

     公演が近くなれば照明、音響、衣装、舞台美術、舞台監督が一堂に会す場合もあれば個別の場合もありますが、打ち合わせを重ねてプランを決定し、公演へ向かいます。



    ー 演劇の魅力、演劇制作の魅力とは?
     舞台と客席とが一体になって想像力を糧にどこへでも行けてしまうというのが演劇の魅力だと思います。そういう面白い演劇は札幌ではほとんど見ることがないですけどね。そういう公演に関われたら幸せですね。

     演劇制作の魅力は、やっぱりそういった素晴らしい作品とまだ観たことのない観客を出会わせることじゃないかと思います。この辺をきちんと伝えて演劇の制作者を増やしていくことを考えないとということで、北海道教育大学岩見沢校の閔先生やtattの小島さんたちと来年度に向けて策を練っております。


    ー 現在手掛けている公演について教えてください。
     弦巻楽団の代表作『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』、札幌公演が今週末に迫っています。昨年、札幌演劇シーズン2018-冬のレパートリー作品として上演した作品を、キャストもそのままに9〜10月に札幌、帯広、東京で上演します。観終わった後に、気分良く足取り軽く会場を後にできるような爽快な作品です。何度でも観てほしい。チラシに演劇シーズンの「ゲキカン!」の悦永弘美さんのコメントを引用させていただきましたが、その通り、初めての観劇がこれだったら少なくとも演劇を嫌いになるようなことはないと思います。演劇を見たことがないお知り合いを誘って是非観に来てください。

     今回で6回目の公演なのですが、同じキャストでの再演は初の試みだそうです。そういうこともあって、稽古場ではより高みを目指す作業が続いています。前回観たという方でも新たな楽しみ方ができるんじゃないかと思います。

     今の座組、素晴らしくバランスが良いと思っていて、できることなら一生これだけやっていたいくらい好きなのですが、流石にそういうわけにもいかないので、おそらくこの座組では最後となるであろう今回のツアーを、何より私が楽しみたいと思っています。札幌公演千秋楽の翌日に帯広移動とか、スケジュール的に大変かつ予算も膨大になっていまして、それこそ今まさに大ピンチに直面している感がありつつも、稽古場にいるといい想像しかできなくなるから不思議です。とにかく東京公演に向けては台風による被害がないように、それだけを祈っています。この公演で手一杯ですが、そろそろ来年度のことも動き出さないとと気持ちばかりが焦っています。


    ー これから初めて劇場に行こうとしている観劇初心者さんへひと言お願いします。
     ひとくちに演劇といっても種類は様々です。甘えたことを言うようですが、小劇場演劇は一度目で面白くないなと思ってもいろいろ見ていくと好みの作品や劇団に出会えることもあると思います。とりあえず、再演されている作品ならある程度期待して良いと思いますので、何を見たらいいかわからない時には「再演」というのを基準にして選んでいただけたらいいかと思います。そういう意味でも札幌演劇シーズンはオススメですね。

     『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』は何度も上演されてきただけあってエンターテインメント作品として成熟してきてますし、何より永井秀樹さんという青年団(*)の名俳優が今回もさらなる深みを与えてくれています。サンピアザという商業施設の中にある劇場ですし初めての方でもハードルが低い場所じゃないかと思います。この三連休、ぜひサンピアザ劇場へお越しください!

    *青年団=1983年旗揚げ。日本の演劇界に多大な影響を与えた平田オリザ(劇作家・演出家)主宰の劇団


    インタビュー:阿部雅子
    作図:小島歌織
    舞台写真提供:ラボチ

    演劇制作会社ラボチ HP
    https://www.sapporo-engeki.com/

    弦巻楽団#34
    『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』

    【作・演出】
    弦巻啓太

    【出 演】
    永井秀樹(青年団)
    岩杉夏(ディリバレー・ダイバーズ)
    小林なるみ(劇団回帰線)
    遠藤洋平
    柴田知佳

    【日時】
    9月21日(土)18:00
    9月22日(日)14:00/18:00
    9月23日(月祝)14:00

    【会場】
    サンピアザ劇場(札幌市厚別区厚別中央2条5丁目7-5)

    【料金】
    一般 前売3,000円 当日3,300円
    22歳以下 前売1,500円 当日1,800円
    ※全席指定

    お問合せなど公演詳細情報はこちらをご参照ください
    https://artalert-sapporo.com/events/detail/1922

     

  • アート好きにおすすめの第13回札幌短編映画祭 上映作品

    今年で13回目を迎える札幌国際短編映画祭。毎年コンペティション作品の上映と様々な特集プログラムを上映しているこの映画祭、今年は世界106の国と地域から応募された3604作品の中から選ばれた93作品が10月11日(木)〜14日(日)札幌プラザ2・5をメイン会場として上映されます。
    また、今年は翌週10月19日(金)〜21日(日)に「特別/アワード上映」としてコンペティション作品の中から受賞作品の上映や特定のテーマで集められたプログラムを上映。

    コンペティション作品はまさに多種多様であり、映像表現を用いた様々な作品が一同に介しています。そんな中からフェスティバルディレクターの島田英二さんに「アート好きにおすすめするとしたら」ということで作品をチョイスしていただきました。

    『共生-ダンス・ウィズ・AI』 原題:CO(AI)XISTENCE 12分37秒
    監督:ジャスティン・エマール 

    監督のジャスティン・エマールは写真、ビデオ、インスタレーション、拡張現実など様々なメディアを用いてイメージについての探究を行っているアーティスト。今作は第7回モスクワ国際現代美術ビエンナーレでも出展された(出展時の様子リンク)人とアンドロイドがダンスで対話を行う実験的作品。ダンスは近年俳優としてよりもダンサーとしての活躍が目覚ましい森山未來。共演するアンドロイド『オルタ Alter』は、あの石黒浩と池上高志の研究室が共同開発。
    人工知能によって周囲の環境を分析し音と身体で表現するオルタと、それに呼応する形で身体で会話をする森山未來。この作品は人間とロボットとの親密な対話が成立していくさまを丹念に映し出しています。

    上映プログラム:I-D
    10月11日(木)12:00
    10月12日(金)オールナイト29:00
    10月14日(日)16:00

     

    『血と炎』 原題:BLEEDING AND BURNING 2分36秒
    監督:ギラム・マリン Guillam Marin

    ダンスをする2人の人物が全身に赤と黒の布をまとうことで描かれる曲線は人間の身体を拡張し、人間ではない何かを想像させる。それを監督は「この作品はパレイドリアを生む」と表現している。パレイドリアとは視覚刺激を受けとり、普段からよく知っているパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象を表す心理学用語。ダンス表現が映像という一視点からの記録を得ることでその表現力が数倍にもなった作品です。(予告編)

    上映プログラム:I-D
    10月11日(木)12:00
    10月12日(金)オールナイト29:00
    10月14日(日)16:00


    『Reruns』 14分23秒
    監督:ロスト Rosto

    「すべてが違っていて、でもすべてがなにも変わっていない。」哲学的な説明とともに水中に浮かぶような子どもの映像。記憶や夢を映像化したらこんな感じでは?映像作品としてそのビジュアルの美しさは目を見張るものがあります。(予告編)

    上映プログラム:I-E
    10月12日(金)17:00/22:00
    10月13日(土)12:00


    『DOWN ESCALATION』
    監督:林俊作

    監督の林俊作は中学2年生の時に第10回文化庁メディア芸術祭で奨励賞を受賞。2011年にはダミアン・ハーストなど多くの人材を排出しているイギリスのゴールドスミス・カレッジに入学。昨年札幌国際短編映画祭でも上映された『Interstitial』が先日ボルトン映画祭でベストエクスペリメンタルを受賞。アカデミー賞短編アニメーション部門の審査資格リストに入るなどその活躍は目覚ましい。そんな彼の最新作が上映。絵画が動くようなアニメーションを是非体感してください。

    上映プログラム:N-B
    10月11日(木)20:00
    10月13日(土)オールナイト25:30
    10月14日(日)10:00

    ——
    今年の札幌国際短編映画祭では2日間オールナイト上映が行われるなど映画漬けで過ごすことができるタイムテーブルとなっています。今回ご紹介した作品はあくまでごく一部。感動するドラマものもあればアニメーション、ドキュメンタリーや爆笑してしまうコメディまでその表現は実にさまざま。今まで行ったことがない方もその映像世界の多様さに触れてみてはいかがでしょうか。


     

    第13回札幌国際短編映画祭
    http://sapporoshortfest.jp/18/

    ▼期間
    ◎プログラム上映

    2018年10月11日(木)〜14日(日)
    ◎特別/アワード上映会
    2018年10月19日(金)〜21日(日)
    ◎アワードセレモニー
    2018年10月14日(日)20:00〜(予定)

    ▼メイン会場
    札幌プラザ2・5 :札幌市中央区南2条西5丁目(狸小路5丁目)

    ▼​料金

    1プログラム券 当日1300円/3プログラム券 当日3300円