REPORT/INTERVIEW

  • 祭りの妖精、祭太郎でございます!ー 活動20周年、知られざるその軌跡に迫る


    写真:小牧寿里

     

    私と祭太郎との出会いは、ライジングサンロックフェスティバル。
    初めて彼を見たのは2003年頃。毎年会場に行くと必ず祭太郎はそこにいた。

    うさぎの耳を付け、上半身は裸、八百屋みたいな前掛けにスパッツ姿のその男はひたすら、誰に向けたのかわからない、呟きのような悟りのような口調で言葉を発しながら、草の路上でひとり受け身を取っていた。
    そこここでライブの音が聴こえてくる会場でステージ間を移動する道すがら、彼の前を通り過ぎる人たちが、そのパフォーマンスを眺めては面白がり、一緒に拳を上げながら、また次の場所へ流れてゆく。

    彼を見る人は思っていただろう。
    ステージも何もないところで、おかしな格好をして、次の日の陽が昇るまで、声が枯れても叫び続けている…。「ヤツは何者なんだ?」

    受け身や口上などのパフォーマーとして、美術家として、時にリングアナウンサーとして、はたまた鍼灸治療師として、さまざまな活動を続ける祭りの妖精・祭太郎。
    10年以上見続けていても未だに生態がわからないその人(妖精?)の、現在に至るまでを聞いてみた。

     

    ーそもそもいつ頃からアーティストやパフォーマーを志していたのですか?

    正直、アーティストを志したことは一度もないです。
    将来の夢が思いつかない子どもでしたから(笑)。
    自分の頭の中にあるアイディアや身体から沸き起こる閃きを外にだしたいという生理的な現象をどう処理するか?ということがこれまで生きてきた中での命題でした。

    私がアーティストやパフォーマーなどで括られる事にこだわりはないのです。
    ですが、関わってきた人たちの多くがプロフェッショナルな仕事をしている人です。間近に接して、その人の生きざまを感じて憧れたり、あの人のあの部分をこっそり真似して、いつか披露しようかな?と思っていると、現在はいつのまにか機会を頂けることがあるので、有難いですね。 

     

    ー祭太郎としての活動を始めたきっかけは?また、祭太郎の名前の由来とは?

    私が20歳の頃、ドイツ・ハンブルグで行われた端 聡さん(美術家)の個展のオープニングパーティーの時、受け身パフォーマンスを披露しました。そこで私は大きな刺激を受け、いろいろな場所で人に会いたいと思うようになりました。
    のちにハンブルグで開催するアートの展覧会のお誘いを受け、そのための活動資金を貯めようと、活動拠点を札幌から実家のある名寄に移しました。
    その間、埼玉の工場に出稼ぎに行ったのをきっかけに、休みを利用して東京にある現代美術ギャラリーやクラブに行っては、そこで会う人たちから多くのことを吸収していきました。

    また、同じような時期に、美術家やなぎみわさんの仕事で、北海道ロケのアシスタントをする機会がありました。それまでは地元の作家さんの仕事を見る機会しかなかったですから、やなぎさんや、スタッフの方の仕事に対する姿勢や眼差しの強さに衝撃的な感動がありました。その後も何度かアシスタントさせて頂く機会があり、撮影ロケでロサンゼルス、ニューヨークなどにも帯同しました。刺激的な毎日で気持ちが昂り続けていましたね。
    作家の方の話しを聞いたり仕事を間近に見るという事が自分の糧になると確信してからは、知らないところに行って新しい刺激を受けるのが楽しくて仕方ありませんでした。 

     

    「祭太郎は、ノートの落書きから生まれたのでございます。」

    同時期に、とかち国際現代アート展「デメーテル」関連企画で、帯広で道内新人アーティストの展覧会が行われることを知り、作品募集のプレゼンテーションに応募しました。
    2002年、私がちょうど24歳の時ですね。私は若手作家枠、ボランティアスタッフとして参加しました。
    デメーテルの期間は帯広競馬場に世界で活躍するアーティストがたくさんやってくる。そこには相当な刺激があると、確信的にわかっていました。自分がスタッフとして参加すればその刺激は何倍にもなると思いました。
    まさにその通りの毎日でしたね。スタッフや関係者の方々は運営が大変だったと思いますけど(笑)。

    デメーテルの開催期間中、帯広駅前通りにある藤丸デパートの向かいに、サポートステーションというアート展のインフォメーションコーナーがありました。そこに常駐するボランティアスタッフが共有する日誌ノートに「祭太郎のお悩み相談」という落書き的な書き込みをし、「祭太郎という架空の人物」がボランティアスタッフの悩みを豪快に解決していく。
    いわゆる、おふざけな絵と文を書き込んだのが、祭太郎の本当の始まりですね。
    ふざけた落書きから始まったなんて、恥ずかしいからあまり人に言っていません。 

    それから数ヶ月後、平原まつり(帯広市)の盆踊り団体枠に「祭太郎と男女うさぎおどり道」というチーム名でエントリーしました。私以外、全員うさぎのコスチュームでおどりました。見切り発車でいきなり本番を迎えましたから参加した人たちは不安と緊張の中、スタートから20分くらいは、ただただ練り歩くという(笑)。それでも、だんだんコツをつかんできたのか盆おどりの後半はみんなノリノリで気持ち良く踊ったり跳ねたりして楽しかったですね。そうそう、審査員なんとか賞なんてのも頂いて嬉しかったのが思い出ですね。

    余談ですが
    その次の日にライジングサンロックフェスティバルに参加しました。うさぎ受け身パフォーマンスをおこなう予定だったのですが、会場に着いてから、うさぎコスチュームを帯広に全部忘れてきてしまったことに気がつき、仕方なく車で取りに戻るということがありました。往復で8時間くらいかかりましたね。
    始まる前から心も身体もヘトヘト。そのあともいろいろありまして、ライジングサンロックフェスにも自分にも完敗し打ちのめされたことを強く記憶しています。

    写真:小牧寿里

     

    その後、某TV「青年の主張」的な番組に出演しました。受け身パフォーマンスに関する主張をしたのですが、ガチガチに緊張して、自分でも聞いている人たちも何を言っているのかわからない主張になってしまい、放送事故のようなことをおこしてしまいました。この大失敗により自分自身が完全崩壊した感覚と同時に少しホッとした感覚が湧き起こりました。それまでは自分の事、人の事を意識しすぎて、精神も身体もがんじがらめになっていたのです。それが大失敗したことにより、気恥ずかしさと可笑しさとしょうがなさが全身いっぱいに広がり身体が解きほぐれていくような、吹っ切れた感覚がありましたね。

    それまでは、キャラを演じることが気恥ずかしい部分があったり、やる気ある自分を茶化して誤魔化して生きてきました。思春期におこりそうなことですね(笑)。
    ですが、人の事なんて関係ない、自分が夢中になって頑張りたいことは自信を持ってやる。その方が、何もやらないでモヤモヤして生きるより断然いいんじゃない?とそう思いました。

    翌年、決意しました。2003年のライジングサンロックフェス、自分が祭太郎なんだと。ネタも落ちもない、太鼓も叩けない、あるのは石狩の地に立ち続ける心意気だ。そんな風に自覚しましたね。

     

    ー15年間、毎年出演しているライジングサンロックフェスティバル、最初に出ることになったきっかけって?

    友達の紹介で、PROVOの吉田龍太さんと知り合ったのがきっかけです。2002年、ライジングの会場でART表現する場を設けるので、なんか面白いことやろうよと集まったペインターや立体作家、いろいろなタイプのアーティスト中の1人として参加しました。

     

    ー忘れられない思い出はありますか?

    2007年、夜もふけたころ、太鼓口上パフォーマンス中に怒髪天の増子直純さんに声をかけて頂いたときですね!
    増子さんは、私との出会いを「キャッチセールスみたいな出会いだった」と(笑)。
    数時間後にezoistという北海道出身のアーティスト編成バンドのステージに一緒に上がる事になりました。そんなことを夢には思っていましたが、現実になるとは、びっくりと緊張と色々な感情が溢れましたね。
    それから、プロのミュージシャンと共演させて頂く機会が一気に増えました。

     

    ーライジングサンでやらかしちゃったことがあれば教えてください。

    2002年、1番最初に参加した時、祭太郎を名乗る前、口上スタイルもできていなかった頃、うさぎのコスチューム着て会場でほとんどなにもやらなかったことですね。ただただ歩いていましたね(笑)。その時は楽しいから何も感じなかったんですよ。

    ただ、その年出演されていた井上陽水さんの「傘がない」という曲の「都会では自殺する若者が増えている」というフレーズを聴いてガツーンと頭を殴られたような衝撃を受けました。
    その時、俺はここで何をしたいのか?を自問自答し続けましたね。実はそれがきっかけになり、祭太郎口上スタイルが出来たわけです。
    会場をただ歩くなんて今なら絶対やらないことをやっちゃった。その時悔しい思いをして、なにをするべきか気づけたのが良かったと思います。

     

    ー今では恒例となったライジングサン、日曜朝のラジオ体操がスタートしたわけは?

    最初は朝の誰も何もやっていない隙間の時間が空いていたのがきっかけですね。
    ライジングに参加して次の日の朝だいたい筋肉痛でしたから(笑)。
    その頃は20代から30代のお客さんが多いイメージでしたので、懐かしい夏休みの朝の思い出と共にラジオ体操をみんなで一緒にやったらいいなと思って始めました。

     

    ー出演回数を重ねて、いまでは祭太郎はライジングサンにはなくてはならない存在だと思いますが、現在は参加することをどんな風に思っている?

    2000年のライジングサンに、エゾロッカーズ(ライジングサンに参加するお客さんの呼び名)として参加したときに、これまで生きてきて「こんな楽しい面白い世界、時間があるんだな」と思ったと同時に1人でいくら表現しても辿りつかないものが存在するんだと心底思いました。
    音楽聴いて踊って、飲んで食べて、知らない人とはっちゃけたり、疲れたら寝て、朝を迎えて、夜がきて、また朝がくる。その繰り返し。お祭りを作るって、こういう事だなと思いました。生活まるごと持っていくとこんなに楽しいんだなと。
    自分にとってライジングサンの影響が大きいので、世の中のたくさんあるイベントの一つにしたくない思いが強かったのと、ライジングは音楽が主軸であることは言うまでもないですが、衣食住、生活まるごとを持って楽しむ意義みたいなものを、道をただ移動しているだけでも楽しさが沸き起こる空間、時間があるってことを伝えたいんです。それが毎年同じうさぎのおっさんがなんかやってるだけでも記憶の目印になると思うんですね。

    15年の間、幸運にも、運営、アーティスト、お客さん側からの視点を持つことが出来ました。たくさんの人の視点を持つことが出来て世界がますます広がっています。
    無責任に一生懸命にライジングサンロックフェスティバルを表現出来ることは自分にとって本当に光栄なことです。
    いつまでも出来ることではないから、チャンスがあったらその都度、後悔のないよう、はっちゃけるだけです。
    だけど、最初はとにかく必死でしたね。一年のうちの数日ですから大したことないですけどね(笑)。 

     

    ーところで…祭太郎ってなにものなの?

    「テンションと哀愁を足して2で割ったもの。」

    音楽フェス、現代美術、プロレス、鍼灸、合気術、などなどあらゆる分野の成分を独自に配合し続ける存在、それが祭の妖精・祭太郎ということでよろしいでしょうか。

     

    ー祭太郎として表現したいことは?

    「命にまつわるすべての中にある一部分を表現したいのでございます。」

    その、ある一部分のすべてを私の内側であったり、外側だったりで感じたなにかを自分なりに咀嚼して外に吐き出したいのです。そして飲み込みたいのです。

     

     

    ー現在、札幌で開催中の個展について教えてください。

    「わかっちゃいるけど、ついやっちゃいました。」

    20歳の頃、ドイツ・ハンブルグで受け身パフォーマンスを披露した時、人々の反応に心の底から自分の魂が喜んだのは生まれてはじめてでした。
    見てくれた人から
    「どうして自ら身体を打ちつけるのか?」
    「あなたにとって痛みとは一体なに?」
    「よくわからないけど面白い」
    「言葉にするのは難しいけど私もわかる。」
    などの感想を貰い、外国の地で、自分の表現が真っ直ぐに届いた感がありとっても嬉しかったです。

    あれから20年の月日が流れて、自分の環境が変わったり、心境が変わったりする中で、少しづつではありますが身体を通じて生きるという実感が湧いてきました。
    今年で40才、特に30代で起こった人生の分岐点である出来事のキーワードが幾つか浮かびました。
    例えば、祭り、震災、結婚、家族、子供、仕事の経験から生と死、出会いと別れ、男と女、エネルギー、私は私なりにこの世界から自立しようと懸命に努力をするも自分にも他者にもある部分依存していたことに気がついたのです。気がつくのが遅かったのでございます。
    人生の分岐点を自分なりにまとめるために、今まで自分の知っていたこと 自分の知らないことを深く掘り下げる方法として、映像、絵、写真コラージュなど私が20年前に刺激を受けた現代美術の手法を使いました。

    自分の内側にある今まで知らなかったことを知るという行為は、たとえ不安定な環境や状況が続いていたとしても、安定的な自己に戻れるのではないか?世界の不安定さを外から受け止めるだけではなく、自己の中に、世界の不安定さを入れ込むことが出来たならば、矛盾を矛盾として受け止めることが出来るのではないか?なんて思ったり思わなかったりしながら、 新しい出会いを生み育み繋がりとしての世界を身体全体で認識したいが為のきわめて個人的な作品、展示内容になってしまいました。
    (個展の開催情報は下記に掲載)

     

     

    道北の名寄出身だそうですが、札幌を拠点に活動する理由は?

    「なんだかんだ言って居心地がいい場所だからだと思います。幼い時から大好きな土地ですしね。」

    肉体的にも精神的にも常に移動しないと生きてる心地がしないのですが、仕事柄、定位置についていなければならない事が多いので、札幌に住みながらも、精神的に移動するよう常に気をつかっていますね。
    例えば、読書したりとか。…普通ですね(笑)。
    つい最近まで、自分に関わるジャンルのシーンを自身にざっくり当てはめて、息苦しさや足りなさをストレスにしていた嫌いがありましたが、現在は、一人の世界をじっくり観察、考察して面白さを発見することに喜びを感じるようになりました。それはある意味、"旅先で偶然出会ったあの風景、あの時間"のような感覚を覚えます。
    私の居場所で面白い人物と出会い続けているから飽きることなく札幌で活動していると思います。

     

    ー鍼灸師としても活動しているそうですが、鍼灸治療院を始めることになったいきさつは?

    「いろんなタイミングが重なっての開業でした。」

    なぜ鍼灸師の免許を取得したのかと言うと、小さい頃から両親や祖母の肩を揉んであげていたことがきっかけかもしれません。親指の関節が柔らかくて曲げた角度がちょうどいいツボにあたるみたいで褒められて嬉しかったことを記憶しています。

    30才を前にして治療家の方とお会いする機会がありました。世界中旅をしながら一宿一飯のお礼に治療をする話を聞いて自分もそうしたいと思いました。
    また東洋医学の話を聞いてみると、自分が受け身パフォーマンスや祭太郎を表現する上で考えていたこと、疑問に思っていたことがなんとなく腑に落ちて、親近感が湧き、鍼灸の道へ進もうと思いました。
    資格取得後、5年間、治療院に勤めながら、表現活動は続けていました。合気道を始めたのもこの時期ですね。

    あくまで、自分の心持ち的なことなんですが、それぞれの分野の経験を一つにまとめて力を発揮出来る場所を作りたいなと単純に思いました。治療にしても、生活にしても、お金にしても、受け身にしても、祭太郎にしても、何にしてもやはり行き着くところ、落ち着くところは、身体にまつわることだと直感し、自分の悩みどころは、他の人の悩みどころでもあり、自分なりの出し物でお互いがお互いを助け、助けられるようなそんな場所。その一つの方法が治療院という形でした。
    まだまだ課題は山積みですけど、今まで見えなかった課題が見つかるので飽きることなくこれからも続けられそうです。
    あれ、質問の答えになってますかねぇ?

     

     

    ー 今後やりたいこと・目標はなんですか?

    さっきから自分、自分て、自分でもうざいと思いますが、やはり自分の出し物が人に喜んでいただけるように精進して生きていきたいということが目標みたいなものでしょうか?
    最近は植物や鉱物にも興味が湧いてきたので色々知ったり体験していきたいですね。

     

    文・聞き手 佐藤史恵

     

     

    パフォーマンス動画
    RSR2014 ダイジェスト 特別編 祭太郎 - YouTube
    https://youtu.be/X3fDqbXHr6Q

     

    祭の妖精・祭太郎個展 受け身パフォーマンス活動20週年記念
    「KUNZU HOGURETSU・組んず解れづ・クンズホグレズ」

    会期  2017年5月27日(土)〜6月24日(土)
    休館日  日祝
    時間  13:00 - 21:00
    会場  CAI02 札幌市中央区大通西5 昭和ビルB2
    主催 | CAI 現代芸術研究所
    http://cai-net.jp

     

    プロフィール

    祭太郎
    現代美術家、鍼灸師、1977年北海道名寄市生まれ
    1998年公共の路上で突然一人で受け身をとる身体パフォーマンスを始める。痛みを含めその様子を撮影、周囲のリアクションを含めた映像作品をギャラリーなどで発表、2003年 媒介者(祭の妖精)をコンセプトにした祭太郎というキャラクターで表現を始める。2007年北都プロレス、リングアナウンサーとして活動開始、2010年より 鍼灸師の免許を取得。2015年、札幌市内に「未来miraiマッサージ・あんま・指圧・はりきゅう」を開設。現在作家、パフォーマーと並行して活動を行っている。
    大東流合気 実践あらい道場 初段。

     

    経歴

    祭太郎 / maturi taro
    1977 北海道名寄市出身
    1999   CAIアートスクール卒
    2010 北海道鍼灸専門学校 卒

    主な展覧会、イベント

    2017  500m美術館vol.21 500メーターズプロジェクト004「おはようございます、おつかれさまです」展(札幌)
    2003~2017  RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO /石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ(石狩)
    2007~2016  さっぽろアートステージ (札幌)
    2014     さっぽろアートステージ ART STREET / 地下歩行空間 (札幌)
    2013   旅するアート /500m美術館 (札幌)
    2013   まつりのつぼ /CAI02(札幌)
    2012   春山登山展 /hickory03travelers(新潟)
    2011   サッポロ未来展 /北海道立近代美術館/(札幌)
    2011     横浜トリエンナーレ特別連携プログラム 新・港村~小さな未来都市 BankARTLifeⅢ(横浜)
    2009    雪国の華 /M50 Creative Garden, Vanguard Gallery 上海莫干山路50号 – 4号楼A座204、6号楼1F、18号楼1F (3会場)(上海)
    2008   FIX・MIX・MAX!2-現代アートのフロントライン[最前線]- /宮の森美術館(札幌)
    2006   FIX・MIX・MAX!-現代アートのフロントライン[最前線]- /北海道立近代美術館(札幌)

     

    祭太郎ブログ
    https://ameblo.jp/maturi-taro/

    未来mirai あんま・指圧・マッサージ・はり・きゅう
    http://www.maturimirai.com

    北都プロレス
    http://sports.geocities.jp/winplaza2000/

    大東流合気 実践あらい道場
    http://www.daitoryu-araidojo.com

     

     

     

  • いよいよ全貌が見えてきた札幌国際芸術祭2017

    今年2017年8月6日から札幌市内全域で開催される札幌国際芸術祭2017(略称SIAF2017)の全貌発表の記者会見が先日5月11日さっぽろテレビ塔で行われました。

    2014年、坂本龍一さんをゲストディレクターに迎え始まった札幌国際芸術祭。2回目となる今回はゲストディレクターに大友良英さんを迎え「芸術祭ってなんだ?」をテーマに開催されます。先日の発表ではサブテーマとして「ガラクタの星座たち」が発表されました(サブテーマについては公式サイトをご参照ください)。前回の発表より数倍に増えた今回の内容、全て紹介するのはすごいボリュームになりますし、より詳しい情報は各種ニュースサイトに取り上げられるので、ART AleRT SAPPOROでは道外の方向けに会場からフィーチャーして札幌国際芸術祭2017をご紹介します。

     

    広大な彫刻公園『モエレ沼公園「RE/PLAY/SCAPE」』

    モエレ沼公園

    札幌の観光地としても有名なモエレ沼公園。彫刻家イサム・ノグチが基本設計を行い公園全体がひとつの彫刻作品になっていることでも有名です。広大な敷地が幾何学的な稜線をもった山や噴水、遊具などがそこかしこにあり、その風景はどの地点から見ても他では見られない光景が展開され様々なCM・映像作品のロケにも使われています。写真映えする風景と言ってもいいかもしれません。もちろんそれだけでなく配置されている遊具は小さなお子さんでも楽しく遊べる色々な形の滑り台や大きなブランコなどがたくさんあり、夏には楽しく遊べるモエレビーチなどが登場し、多くの家族連れで賑わいます。

    そんなモエレ沼公園で展開される「RE/PLAY/SCAPE」は、元々発表されていた大友良英+青山泰知+伊藤隆之による《without records》とコラボレーションする形で伊藤隆介の参加が発表されました。伊藤隆介はこの公園が出来る以前はゴミ処理場だった歴史に焦点を当てたジオラマ作品を発表するとのこと。また、公園のいたるところで大黒淳一×SIAFラボによる会場の環境データを利用した音響彫刻も展開されるそうです。札幌市民にとっては馴染みのあるモエレ沼公園を様々な視点から見直すきっかけとなることでしょう。

    もちろん、まだモエレ沼公園に行ったことがない方は公園自体を楽しむとともに芸術祭作品を堪能できる貴重な機会となりそうです。札幌都心部からは少し離れているので時間に余裕を持って行くことをオススメします。お弁当を持っていってもいいかもしれませんね。

     

    森の中に美術作品、美術館が点在する
    『芸術の森「NEW LIFE:リプレイのない展覧会」』

    もう1ヶ所、都心部から離れているけれど見逃せない展示会場である芸術の森。広大な敷地の中に美術館や工芸館、野外美術館(森の中に立体作品などが点在しています)などの展覧会場や、アートホールや野外ステージ、さらには歴史的建造物である有島武郎邸などがある非常に広い施設です。

    今回の芸術祭ではこれら点在する施設及び野外美術館も含めた広大な森全体を使って展開する「NEW LIFE:リプレイのない展覧会」が開催。ここで展示をおこなうのはいずれも音を表現の入り口として唯一無二の活動を続けてきたアーティスト達。すでに発表されていたボアダムスのEYƎ刀根康尚などに加え、今回新たに世界的アーティストであるクリスチャン・マークレーが発表されました。

    また会期中である9月3日には芸術の森野外ステージで日本からOKI原田郁子、台湾から原住民族のアーティストも迎え行われる音楽フェスティバル「マレウレウ祭り in SIAF2017~目指せ100万人のウポポ大合唱~」が開催されるので、この日に行けば、芸術の森をまるごと楽しめるかもしれません。

    広大なうえに起伏のある施設ですので、芸術の森を訪れる際は歩きやすい靴を履いていくのがオススメです。また芸術の森の隣にある札幌市立大学では2016年に「40 Under 40 アジア・パシフィック アジア太平洋地域で最も影響力ある40歳以下の40人」に選出された毛利悠子作品も展開されるので、全てを見ようとすると結構時間がかかります。森林浴がてらのんびり半日かけるくらいのほうが慌てずにじっくり楽しめそうです。近くに食事をとれるお店があまり多くないので午前中から芸術の森に行き、そのあと町の中心部の展示に移動するなどして北海道のおいしい食事を探すのも手です。

     

    札幌軟石の石切り場跡を利用した石山緑地
    「OPEN GATE 2017」

    芸術の森へ公共交通機関で行く場合、地下鉄とバスを乗り継がなければいけません。そのバスの途中にある石山緑地では9月15日から18日の4日間、『Asian Sounds Research Presents 「OPEN GATE 2017」 ~ 動き続ける展覧会 An ever-changing exhibition』が開催されます。石山緑地はかつて建材に最適とされた札幌軟石の巨大な石切り場跡を公園へと再生させた他では見ることができない空間です。ここで開催される「OPEN GATE 2017」は日没前後からパフォーマンスが始まります。それまでに芸術の森や札幌市立大学を見て、石山緑地へ向かうコースはとても充実したものになるでしょう。

     

    札幌国際芸術祭2017、1日で全部回るのは無理?

    先にご紹介したモエレ沼公園と芸術の森。それぞれ広大な敷地面積を誇る施設な上、札幌市中心部を挟んでモエレ沼は北側、芸術の森は南側とかなり離れています。他にも数十箇所ある会場と全てを1日で回るのはおそらく無理でしょう。今回の芸術祭では街の中心部にも複数の会場が点在しており、またホテルなども中心部に集中しているため、時間をうまく使いながら回って頑張れば2日、できれば3日間くらいあれば全て回れるかもしれません。せっかく北海道に来たのだからついでに旭山動物園や函館にも行こうなんて思ったら危険です。ちょっと東京から鎌倉に行くのとは違います。それぞれもう1日かかると思って計画を立てて下さい。

     

    いっそ宿泊先も芸術祭会場で
    『ゲストハウス×ギャラリープロジェクト「アートは旅の入り口」』

    札幌はホテルが足りないほど観光客が訪れていることもあり、数年前から多くのゲストハウスが建ち始めました。ゲストハウスとはドミトリーがあり、素泊まりできる宿泊施設のこと。かつては「バックパッカーなどの旅行者が利用する安宿」というイメージが強かったゲストハウスも、最近ではシェアしながら様々な人たちと交流でき、地域の魅力を発信する場として再認識されています。

    ゲストハウス × ギャラリープロジェクト「アートは旅の入り口」は、市内4つのギャラリーが企画した、8箇所のゲストハウスに北海道のアーティストの作品が展示されるプロジェクトです。夏の札幌はまさに観光シーズン。ホテルやゲストハウスのご予約は早め早めが確実ですが、ご予約の際の選択肢として、これらのゲストハウスを選ぶのも一興かもしれません。もちろん、宿泊せず作品を見るだけがOKの施設もあります。気軽に訪れて、ゲストハウスの雰囲気そのものも味わってみましょう。

    札幌国際芸術祭2017のチケットは5月17日から発売開始。会期中、有料会場に何度でも入場できるチケット(パスポート)が一般1,500円にて発売。札幌市民・道民の方は5月中に購入すると1,200円になるお得な道民割もあります。またパスポートをお持ちですと会期中土日祝に運行される、札幌駅とモエレ沼公園や芸術の森をつなぐ連絡バスにも乗車でき土地勘のない方でも迷うことなく2つの会場へと行くことができますよ。

     

  • 今年も開催!新千歳空港国際アニメーション映画祭の魅力

    新千歳空港国際アニメーション映画祭 2016」が今年も11月3日(木・祝)から11月6日(日)の4日間開催される。名前の通り世界中からアニメーション作品を一堂に集めた映画祭なのだが、ちょっと面白いのは会場が北海道の玄関口、新千歳空港のターミナルビルだということ。しかも空港内にはイベントホールだけでなく、宿泊施設や温泉施設も完備。会場で全てが完結するという、実はかなり珍しい「空港映画祭」なのだ。

     


     

    新千歳空港国際アニメーション映画祭」について少し説明すると第1回から行われている短編アニメーションコンペティションのほか、国内外のアニメーション作品、商業系アニメーション、クラシックアニメーション、そして爆音上映など、他のアニメーション映画祭よりも作品の幅が圧倒的に広い。アクセスが良く人が行き交う場所ならではの特色を生かし、さまざまな目的でアニメーションが楽しめるラインナップになっている。

     

    Illustration by ぬQ
    ー 空港という会場にふさわしいビジュアルもアニメーション作家が手がけた。「ニュ~東京音頭」で注目を浴びた新時代の人気アーティストぬQ(ぬきゅう)氏が作ったキャラクター「クリオネコ」のビジュアルやPRムービーが新たな発見や楽しい予感を感じさせる。

    同映画祭の実行委員であり、クリプトンフューチャーメディア株式会社の代表取締役である伊藤博之氏は「前回2回は実行委員や関係者の方と試行錯誤しながらも、既成の枠にとらわれずに取り組んできました。3回目の今回、上映作品は本当にバリエーション豊かで、古今東西という言葉が本当にしっくりくる。3回目にしてこんなに完成度が高くなって次回大丈夫か?って思うくらい(笑)。アニメ好きの方だけでなく、感動したいとか、新しい作品に触れたいと思う方が本当に来てよかったと思えるような作品群に仕上がっていると思う。」と太鼓判を打つ。そんな「新千歳空港国際アニメーション映画祭 2016」の注目プログラムをピックアップし、アートアラートおすすめのプログラムをご紹介したい。

     

    『私には未来がある』
     

    大注目のノミネート67作品が集結。「短編アニメーションコンペティション」

    映画祭期間中に行われる短編アニメーションコンペティションは、インターナショナルコンペティション部門、日本コンペティション部門、ミュージックアニメーションコンペティション部門の3つのカテゴリーからなり、ノミネートされた作品を審査員が審議し、受賞作品を決定する。今回は、66の国と地域1,232作品、過去最大の応募があった。その中から67作品がノミネートされ期間中上映される。
    注目したいのは、インターナショナルコンペティション部門でノミネートされた北海道のアニメーション作家である大内りえ子さんの作品『私には未来がある』。3回目にして初めて北海道のアニメーション作品が選ばれた。アニメーションの巨匠たち、世界の若手の名前と共にノミネートされた大内さんの作品はぜひチェックしてほしい。
    また、当日はノミネートした多くの作家が現地入りするとのこと。熱気ある会場の様子を肌で感じながら鑑賞してみては。

    また「新千歳空港国際アニメーション映画祭」ならではのカテゴリー、ミュージックアニメーションコンペティション部門も昨年より行われている。この部門はアニメーションを用いたミュージックビデオなど音楽が重要な役割を果たすアニメーション作品が対象だ。同映画祭のフェスティバル・ディレクターである土居伸彰氏はオリジナリティあるこの部門について「普段、ミュージックアニメーション作品は液晶画面やスマホなど小さな画面で観ることが多いと思うのですが、『新千歳空港国際アニメーション映画祭』では爆音上映の巨大なスピーカーを用いて、大迫力大音量で見て頂けます。ここでしか得られない視聴体験ができる、とてもユニークなコンペティションなんです。」と語る。審査員たちがどんな作品を選ぶのか結果を予想しながら楽しみたい。

    ・短編アニメーションコンペティションノミネート作品

     

     

    『アヴリル・アンド・ザ・エクストラオーディナリー・ワールド』
     

    話題の最新作から日本初上映作品まで。珠玉の「招待作品」

    招待プログラムは国内作品から海外の上映作品までバリエーション豊かだ。
    こうの史代の同名マンガを映画化した片渕須直監督作品『この世界の片隅に』は全国公開初日である11月12日にさきがけての先行上映となり、誰よりもいち早く作品を観たい方にオススメしたい作品。また、アニメーションの音を聴くvol.1 宮﨑駿監督作品『風立ちぬ』と題し、作品の音をスタジオのクオリティに近づけ、最上の音質で楽しめる上映も行われる。
    そのほか、本年のミュージックアニメーションコンペティション審査員でもある人気音楽ユニットgroup_inouが、話題沸騰中の映像ユニットAC部のVJでライヴを行う「AC部+group_inou ミュージック・アニメーション・ライブ」。group_inouは年内で活動休止を宣言しており、北海道で見られる最後のチャンスと噂される貴重なプログラムになりそうだ。
    そして、今だから再評価されはじめた作品もチェックしたい。虫プロダクション製作の『哀しみのベラドンナ』は劇場用成人向けアニメシリーズの3作品目であり、前2作品とは方向性が大きく異なったアーティスティックな内容、過激で官能的な描写などの理由から、発表当時には正当な評価が得られなかった。アートアニメーションが脚光をあびる今だからこそ再評価を期待する声が多くある作品である。今回の上映ではデジタルリマスターされた映像で楽しむことができる。
    国外作品ではアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門でグランプリを獲得したスチームパンク・アドベンチャー『アヴリル・アンド・ザ・エクストラオーディナリー・ワールド』や、人間愛を描くインドネシア初の本格長編アニメーション『バトル・オブ・スラバヤ』が日本初公開となる。国内ではなかなかみられない魅力的な作品も楽しんでほしい。

    ・招待作品
    『この世界の片隅に』
     アニメーションの音を聴く vol.1 宮﨑駿監督作品『風立ちぬ』
    「水曜どうがSHOWリターンズ」
    「AC部+group_inou ミュージック・アニメーション・ライブ」
    「日本アニメ(ーター)見本市」& 吉浦 康裕がパトレイバーREBOOTに至るまで」
    『悲しみのベラドンナ』
    「北海道現代アニメーション総進撃!」
    「日本アニメーション映画クラシックス」
    『アヴリル・アンド・ザ・エクストラオーディナリー・ワールド』
    『バトル・オブ・スラバヤ』
    『ウィンドウ・ホーセズ』
    『ジ・インビジブル・チャイルド』
    「カートゥーン ネットワーク・スタジオ スペシャルトーク」

     

    ⒸCONDOR FEATURES.Zurich/Switzerland.1988
     

    千歳空港国際アニメーション映画祭のハイライト!爆音上映

    音楽ライブ用の機材を使用することで迫力の大音響で上映する「爆音上映」では、映像化は困難といわれつづけてきた筒井康隆の同名小説をアニメ化し、平沢進が音楽を担当した今敏監督作品『パプリカ』、そしてコアなファンも多いヤン・シュヴァンクマイエル監督作品『アリス』がスクリーンに登場。今回の爆音上映はそれぞれ不思議な世界観を持った作品だけに、引き込まれそうだ。さらに大声での声援やアフレコやコスプレもOKの「応援上映」が爆音上映と合体。『KING OF PRISM by PrettyRhythm』『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』も一味違った参加鑑賞型のスタイルを楽しめる。この機会に臨場感あるプログラムを体験してみては。

    ・上映作品
    『KING OF PRISM by PrettyRhythm』
    『劇場版 TIGER & BUNNY -The Rising-』
    『パプリカ』
    『アリス』

    ※爆音上映とは
    通常の映画用の音響セッティングではなく、音楽ライヴ用の音響セッティングをフルに使い、大音響の中で映画を見・聴く試みです。

     

    ゲストトークやレクチャーで作品を深く知る

    短編アニメーションコンペティション、招待作品など紹介してきたが、それぞれ国外からゲストが招かれており、当日作家や監督本人が登壇するプログラムが多数予定されている。作者と距離が近いのも、この映画祭の醍醐味でもある。観終わったあと思い切って作者に話しかけて交流をはかるのもいいかもしれない。
    また、国際審査員等による上映とレクチャー「アニメーション マスタークラス」は今映画祭ならではのプログラム。「ベリー・ベスト・ブリティッシュ・アニメーション・アワード」では、「ブリティッシュ・アニメーション・アワード」の創設者であり今年の新千歳空港国際アニメーション映画祭国際審査委員長を務めるジェイン・ピリング氏が選んだ近年のベスト受賞作品集を上映。短編、CM、ミュージックビデオと多ジャンルにわたり、イギリスの豊かで先鋭的なアニメーション史を振り返るプログラムになりそうだ。そのほか、アメリカのインディペンデント・シーンの最重要作家の1人となったアニメーション作家クリス・サリバン氏の作品上映とレクチャー「アメリカからの小衛星:クリス・サリバン」など、国外のアニメーション作品について、深く知る貴重な経験ができそうだ。

    ・アニメーションマスタークラス
    ジェイン・ピリング 「ベリー・ベスト・オブ・ブリティッシュ・アニメーション・アワード」
    アニメーション作家 水尻自子 「感触を確かめる作業」
    ぬQのニュ~論
    アニメーション作家 クリス・サリバン 「アメリカからの小衛星:クリス・サリバン」
    アニメーション作家 チェン・シー 「二十四節気からの物語」

     

     

    第3回 新千歳空港国際アニメーション映画祭2016
    会期:2016年11月3日(木・祝)〜11月6日(日)
    会場:新千歳空港ターミナルビル(ソラシネマちとせ、センタープラザなどを予定)
    主催:新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会
    入場:前売り券はチケットぴあ、ローソンチケットで販売中

    ◎全期間パスポート 前売り券 2500円 / 当日券 3000円
    ◎1dayパスポート 前売り券 1500円 / 当日券 2000円
    ◎1プログラム券 当日券 1000円 ※前売り販売なし 制限数あり

    ◎学生1DAYパスポート
    映画祭期間中、学生証を持参の高校生以下の学生を対象に、
    毎日先着100名に無料で学生1DAYパスポートを発行

    ◎ご家族でインターナショナルコンペティション ファミリープログラム
    「インターナショナルコンペティション ファミリープログラム」
    (11月3日10:00~@シアター3、11月6日10:00~@シアター1)は
    全期間パスポート、該当日の1DAYパスポート、1プログラム券の
    いずれか1枚でご家族4人までご入場OK!


    文:小島歌織
    写真提供:千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会

  • 500m美術館『三つの体、約百八十兆の細胞』レビュー

     

    「わけのわからなさ、心地の悪さ」

     奇妙な展覧会タイトル(*1)に負けず劣らず、作品もゴチャゴチャしていて不思議だ。早川の彫刻、高石の絵画、加納の写真、とそれぞれ異なった専門を持つ三人の作家が、共同制作のような形で、500m美術館の展示空間であるガラスケースを余すところなく使い切ったインスタレーション作品である。

     ガラスケースの中には、彫刻のような、絵画のような、写真のようなものが、床に置かれたり、壁に立てかけられたりして散らばっている。彫刻や絵画といった属性をもとにして作品を見てみようと試みるも、それぞれが互いの境界を侵犯し合っている状況を前にすると、作品をカテゴライズしようとすること自体が、無意味なことのように思えてくる。見ているこちらが、なんとなくわかった気になって安心したいだけなのかもしれない。

     展示作品は、実につかみどころがない。なにかに定義されることを拒むかのようでもあり、曖昧さを積極的に選んでいるようにも見える。それが、鑑賞者の心地を悪くさせる。作品の前に立っていると、なんだかモヤっとした気持ちになってくる。しかしそれはまた、この作品の魅力でもある。

     

     

     実際の展示作品は、手でこねられたような形のカラー粘土が、不規則に並べられていたり、絵の具が塗られた木の板が、切断されて構造物の一部になっていたり、作品を制作中の風景を撮影した写真の貼られた木の板が、スタジオに置かれた状態を、更に撮影して大きくプリントした写真が貼られていたり、巨大な発泡スチロールの塊を削ったり溶かしたりしながら造形していく過程を記録した動画が、別の構造物へ投影されていたり…。こんな風に言葉で描写しようとすればするほど、ますますわけがわからない。単純な言葉で説明されることから、作品がスルスルと逃げていく。いったいこの作品は、どのように見たらよいのだろうか。 

     

     

     一つの方法として、全体を大きなコラージュ(*2)作品として考えてみてはどうだろうか。コラージュとは、組み合わせられたものがそれぞれ元のコンテクストを離れ、新しい意味や価値を、鑑賞者に気づかせるような技法である。それは、作者自身にとっても思いもよらなかった状況を、しばしば生みだす。特にシュルレアリスト(*3)たちは、この技法によってこれまでに見たことのない風景をつくりだそうとした。本作においては、実材のみならず、ジャンルや技法、タイムラインや空間、液体と気体、化学反応や重力法則なども三人の作家によって一度バラバラの素材に還元され、再構成されている。これら素材の絶妙な交錯は、鑑賞者のものの見方を既知のものから解き放ち、思いがけない跳躍を楽しませる。 

     以上は、コラージュという技法から見た基本的な作品鑑賞だが、100年以上も前に生まれたこの言葉で説明し尽くせるほど、本作品は単純ではない。それ以外にも、何だか腑に落ちないような、不思議な心地の悪さを積極的に引き起こして鑑賞者を戸惑わせている。

     

     

     たとえば、壁の高い位置に打ち付けられた垂木に、白い紙袋が載せられている。支点が一点なので垂木が当たっている部分が、潰れてへこんでいるのだが、よくみるとこれは紙袋ではなく、ズシりと重い、固まった石膏の塊である。また、テンポよく複数枚並んだ木の板の表面を、それぞれ下に向かって絵の具がドロっと流れ落ちて固まっている。ただし最後の板にだけは、逆に上へ向かって流れた絵の具が、そのまま途中で固まっている。気を抜いて見ていると、急に梯子を外される。あたり前だと思っていた平衡感覚や時間感覚を、いつの間にか狂わせられて背筋がザワッとするような瞬間がある。

     

     

     こういった心地の悪さが、繰り返すがこの作品の魅力である。鑑賞者は作品を前にして、モヤっとしたなにか、ザワッとしたなにかについて能動的に向き合わざるをえなくなる。たとえば重力のような、”目には見えないけれども存在するルール”を、私たちは日常的には、よくも悪くもいちいち考えることなく従って生きている。そういったことを、再認識させられる。このような非日常的な揺さぶりとそこから得られる新鮮な気づきは、心地悪くもクセになるこの作品の魅力のひとつである。

     

    -----

     

    *1 地下鉄大通駅とバスセンター駅の間にある500m美術館にて、2015年9月26日(土)〜2016年1月22日(金)の約4ヶ月間開催された、彫刻家 早川祐太、画家 高石晃、写真家 加納俊輔、3名の作家による『三つの体、約百八十兆の細胞』展。

    *2 パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラックが始めたといわれている、互いに無関係な素材を組み合わせて造形作品を構成する技法。平面に木材や針金などの立体物を貼り付けるなどした手法は、絵画と彫刻の垣根をなくしたともいわれている。

    *3 第一次世界大戦後に広がったシュルレアリスムの代表的な作家は、ルネ・マグリットやサルバトール・ダリなど。夢や無意識、非合理の世界を表現に積極的に取り入れて新しい価値観を打ち立てようとした。他にも、デカルコマニーやフロッタージュなどの技法を用いた。

     

     

    東方悠平 Yuhei Higashikata /美術家

    1982年、北海道生まれ。筑波大学大学院 芸術研究科 総合造形コース修了。主な展覧会に、「個展 死なないM浦Y一郎」Art Center Ongoing(2013)、「第13回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展」川崎市岡本太郎美術館(2010)、プロジェクト「てんぐバックスカフェ」灘手AIR(2013)など。

    http://higashikata.com