2つの顔を持つ柔らかな空間「十年二十年」がオープン

2022年6月5日にオープンした『十年二十年』。手仕事で作られた工藝品を販売するショップと道外作家を中心に紹介する企画ギャラリーという2つの顔を持ったこの空間は、両方を同時に1つの空間で行っているのではなく、時期によって全く異なる場所のように空間全体を使って行われています。
行くタイミングによってまるで違うところに来たような気分になりながらも、どこか共通する柔らかい空気感で迎え入れてくれる『十年二十年』。なぜこういったスペースを始めたのか、代表でグラフィックデザイナーの榊原直樹さんにお話を伺いました。

 

ー「十年二十年」をはじめた経緯を教えてください。

この物件は、5年ほど前からデザイン事務所とカメラマン事務所としてパートナーの寺島博美とともに二人でシェアしているオフィスです。
当初から中央のスペースで、普段の仕事とは違う新しいことを始めたいと話していました。都内でギャラリーショップをしていた友人の働きかけや、陶芸作家さんたちとの出会いをきっかけに、以前から収集していた手仕事のへの熱が高まり、工藝品ショップ兼ギャラリーをはじめることにしました。

ー「十年二十年」という名前の由来を教えてください。

長い年月、制作工程やデザインが変わらなものは、生活の中でも飽きのこないものが多いと感じます。100年とは言わないけれど、流行に流されず10年20年とそばに置いておきたいものを扱いたいと思い命名しました。

ー手仕事製品販売と展覧会、2つの業態としたのはなぜですか。

生活に溶け込む工藝も好きですし、生活感と少し距離のあるアートも好きです。一つのことだけに熱中するよりも自分にとってバランスがとれるんです。

 

ー展覧会のスタートを『青木鐵夫 | 木版画展』で始めた経緯を教えてください。

木版画は、手仕事の温かさや美しさが感じることができ、十年二十年の構想と合っていました。版画家の青木鐵夫さんは、高校時代の恩師になります。美術の先生であり美術部の顧問でした。私はテニス部でしたが、進学のためテニス終わりに美術室に行きデッサンを教えてもらいました。
大学時代も気にかけてくださり、最初の就職先である東京のデザイン事務所も紹介してくれました。私がデザイナーになるために大きな力添えをしてくれた方です。その頃から「ギャラリーを持つことが出来たら、最初の展示は青木先生の作品で」と考えていました。こういったことで少しでも恩返しが出来ればと思っています。

 

ー展示・販売ともに今後どういった展開をしていく予定ですか。

展覧会については、不定期での開催となると思いますが、北海道や札幌ではあまり知られていない作家さんを紹介していきたいです。私がグラフィックデザイナーと言うこともありますが、絵画や写真など平面の表現をされている方を中心に考えています。
手仕事のショップは、作り手さんのもとへ足を運び、アイデアを交換しながら制作した商品を扱うことが出来たら面白いと思います。
本業であるグラフィックデザインの仕事もあるため、ゆっくりになりますが納得出来ることを自分のペースで続けていけたらと思います。

ー空間や什器などこだわりなどありましたらお教えください。

什器は全て自分でデザインをして、専門の職人さんたちに造作していただきました。木材は地震での倒木や古材などの道産材を使い、ストーリーのある什器を制作しました。木こりのOut woods、木工のThreekさんにはとてもお世話になりました。
鉄の加工をしてくれた ScBさんは制作のアドバイスなどたくさん協力していただきました。レジカウンターは側面が洗い出し仕上げで、左官職人さんが連日来て制作してくれたものです。

ー今後どんな空間にしていきたいですか。また、どんな方たちに来ていただきたいですか。

心地よい刺激を感じることが出来る空間にしたいです。
大げさに言うと世界って美しいなぁとか、人生って素晴らしいなぁと少しでも感じられる場所に。手仕事やアートに興味のある方はもちろん、それは難しいものだと遠ざけている方にも来て欲しいです。

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十年二十年
札幌市中央区南3条東1丁目メゾンRN4階
instagram:@junen_nijunen

 

インタビュー:カジタシノブ
会場写真提供:寺島博美