BLAKISTON - mangekyoが手がける家具と生活雑貨のショップ、オープン

 

2015年3月7日、札幌の桑園駅にほど近い元倉庫を改装してオープンした家具と雑貨のお店BLAKISTON。
インテリアデザイナーのユニットmangekyoのお二人が手掛けるこの広くて高い天井が気持ちのいい空間には、オリジナルデザインの家具と、彼らがセレクトした生活道具や器、雑貨がゆったりと並べられています。
鉄製の階段を上るとインテリアデザイン設計の仕事場でもあるロフトの空間が。
オープンして間もないBLAKISTONにて、桑園エリアでこれから注目されていくだろうこのスペースに込めた思い、インテリアデザインの仕事への取り組みについて、mangekyoの桑原 崇さんと児玉 結衣子さんのお二人に聞きました。

 

ー家具と日用品のお店 BLAKISTONをはじめようと思ったきっかけはどのようなことでしたか?

児玉 以前からお店をやりたいなとは思ってたんですけど、何のお店をやるかは決めていませんでした。
インテリアデザインの仕事では今まで、飲食店を手がけることが多かったのですが、クライアントは食に関してはもちろんプロフェッショナルな方々です。だから、自分たちがお店をやる時に、飲食の分野に参入して行こうというのはリアルに考えられませんでした。

桑原 何をやるかは決めずに、色々と物件を見て回っていた時期があったんです。その時この場所を見つけて、ここでなら何かやりたいと思いました。そういう流れで物件を決めてから、何をやるかというソフトの面を考えて行きました。

児玉 今まで10年以上インテリアデザインをやってきて、その中で家具や生活雑貨に関わってきました。だから、もっとインテリアを掘り下げて行くという意味でも、家具や雑貨を扱う方が自分たちのやることとして正しいんじゃないかと思ったんですね。それで、オリジナル家具と雑貨の店をやることに決めたんです。
お店を構えることによって間口が広がり、インテリアデザインの仕事を手がける私たちのことを知ってもらえる機会が増えるんじゃないかなとも思っています。

桑原 僕らはこれまで長年インテリアデザインに携わってきました。クライアントには理想的なライフスタイルを提案しておきながら、一方で自分たちは仕事に追われる毎日で、ひどく荒んだ暮らしをしていることにずっと矛盾を感じていたんです。生活に密着した身近なものに深く関わりを持つことが、自分たちの暮らしについて考えるきっかけになるのではと思いました。

 

 

ーお店をやりたいと思い始めたのは、何か理由があったのですか?

桑原 2010年から2年くらい、東京に拠点を移して仕事をしていました。東京で仕事をしていた時に「北海道で僕らができることって結構あるかもしれないな」と思ったことが大きいです。
こういうお店も、東京で仕事をしていたら多分できなかっただろうし、北海道に戻って来たら何かやりたいなと思っていました。仕事や旅行で地方都市に行った時に、こじんまりした良い店が結構あって、そういう店に触発された部分もあります。

 

ー物件を決めて、お店ができるまでどれくらいかかりましたか?

桑原 インテリアデザインの仕事では、店舗の場合、設計を依頼されてからオープンまで最短で3ヶ月くらいなんですけど、ここを作るのはかなり時間がかかりましたね。
物件を決めて、内装を考えて作ってから、何をやるかを考えて徐々に作っていった感じです。だからお店ができても、商品も何もない、がらんどうの状態が結構長く続いてました(笑)。

 

 

児玉 お店の中身について、内装と平行して考えていた部分もありますが、できあがってから考えて進めて行ったことも多いです。当初は今年の1月末オープン予定だったんですけど、オリジナルの家具をしっかり作りたいと思ってやっていたら、3月までかかってしまいました。
家具が完成してお店に来る日に合わせてオープン日を決めた感じです(笑)。

桑原 お店としては、家具が来るまでやることがないので、ひたすら設計の仕事をしてました(笑)。

 

 

ーBLAKISTONという店名の由来を聞かせてください。

児玉 トーマス・ブラキストンというイギリス出身の動物学者の名前からきています。
ブラキストンは、北海道と本州の間にある津軽海峡を東西に横切る生物地理上の境界線(ブラキストン線)、動植物の分布が変わる境界線を発見した人です。
1925年、思想家である柳 宗悦が、民衆の暮らしの中から生まれた美しさの価値を人々に広めようと「民藝運動」を始めました。けれども現在「民藝」についての話題になる時、ブラキストン線を境にして北側にある北海道の「民藝」については情報がほとんどないんです。
私たちは柳 宗悦の「民藝」の精神を大事に思いながら、このBLAKISTONを作りました。このお店にはまだ「民藝」とされるものは多くないですが、歴史が浅い北海道の地で、「民藝」の精神で活動したいと思っています。

 

ーお店で扱っている家具や雑貨はどのようにセレクトされているのですか?

児玉 家具はオリジナルでデザインして製作しています。雑貨はその周辺で使えるもの。器などは、作家ものというよりは、民藝運動から生まれたような、無名性のものであり、日常で使いやすいもの。ヘビーデューティーなもの。手に取りやすい金額というのも大事な要素です。自分たちで気に入って何年も使っているものも多いですね。
インテリアデザインの仕事をする中で、最初は内装デザインのみだったのが、最近では雑貨とか細かいもので空間に合うもの、良いものを教えて欲しいと頼まれることも多くなりました。家具や雑貨はもともと好きだったのもありますが、自分たちでも調べたり考えるようになってきました。

 

 

ーどんな方が多くお店に来ますか?これから、どんな人に来てほしいですか?

児玉 Facebookなどの情報を見てきましたという方や、近所の方が多いかな。
建物自体はできて、中になにもない期間が結構あったので、近所の方はここに何ができるのか気になってたみたいです。

桑原 生活に興味がある人に来てほしいですね。
僕らもそうですが、家庭を持つような年齢になると、生活に興味が出てくると思うんです。今まではファッションに興味があってお金をかけてきたような人も、だんだん暮らす場所やそこに置く家具、雑貨にも興味が移って、より良く生活をしていきたいというような。
僕らも、ずっと安いテーブルを使っていたのを、無垢の木のテーブルにした時、実際使ってみて、すごく気分が良かった。

児玉 良い器をひとつ買っただけで、満たされた気持ちになる。そういうことを実感できたことが大きいです。

桑原 最初は食器などの小さいものから、質の良いものに変えてみたりする。
一度いいものを使うと、そうでないものとの違いがどんどんわかってきました。それまでは、あまりものの質を気にしてなかったはずなんだけど。
そしたら、質の悪いものがだんだん使えなくなっていって、小さいものから大きいもの、家具も良いものを使いたくなるんです。最終的には空間もいいものを、って思うようになるといいな、と思っています。そうすると、気持ちがいい生活ができるのかな、と。
暮らしには色々な考え方がありますが、僕らはインテリアデザインをやってるので、そういうアプローチがいちばんしっくり来るのかなと思います。

 

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