REPORT メディアアート・ラボから考える都市文化 vol.2「ラボから生まれるアート -ライゾマティクス-」

こんにちはART AleRT編集部です。

2015年1月20日、MIRAI.ST cafeにて「メディアアート・ラボから考える都市文化 vol.2」と題して「ラボから生まれるアート -ライゾマティクス-」が開催されました。今回はその様子をレポートします。今回のトークは昨年9月のに行われたイベントの第2弾。

ゲストは、メディアアートを中心に幅広いフィールドで活躍し、国内外から注目をあつめているクリエイティブ集団「ライゾマティクス」の真鍋大度氏と石橋素氏。Perfumeライヴ演出やauのテレビCMシリーズなどなど、彼らを知らなくても手掛けたコマーシャルやミュージックビデオをあげれば、知っている人も多いのでは?

今注目を集める豪華なゲスト陣ということもあり、会場は予約の段階で定員オーバーとなり、当日は立ち見席やライブビュースペースが設けられるほどの盛況ぶり。この日はJRや飛行機が一部運休になるほどの大雪。飛行機の都合で、ゲストの到着が遅れてスタートとなりましたが、その分「生の声」が聞けるかも?と観客席の期待は膨らみます。

 

最初のお話はライゾマティクスを立ち上げたいきさつから。

立ち上げた2006年、世間では少しずつWEBとリアルをつなぐようなプロジェクトが盛んになってきた頃。当初からインタラクティブな広告を作っていこうと思っていたのか?という問いに、「当時から今まで、広告を意識してやろうとは考えていなかった」という真鍋さん。インタラクティブ作品を見たクライアントが、面白がって使ってもらえるようになっていったそう。石橋さんは「当時Youtubeがあまり普及してなかったので、DVDに焼いて見せていた」と振り返ります。とにかく数を作って見せることを繰り返していたそうです。

その後、筋電位センサーと電気刺激デバイスを用いて表情をコピーする実験プロジェクト「“Face Visualizer”,“Face Instrument”」を発表。Youtubeで一躍話題になりました。Perfumeのライブ演出を手がけていた演出振付家のMIKIKOさんに出会い、作品を猛アピール。これをきっかけにエンターテインメントへの活動が広がっていったそうです。


2010年、Perfume東京ドームツアーでは風船爆破システム部分を担当。巨大な箱へと活動場所が移ってから、制作方法はどう変わっていったのか?スタッフの数の変化は…?の問いに、「段取りもわからず、とにかく集められるだけ人を集めて…」「場所がないので近くの公園で実験して、ここ(公園の写真を指して)にMIKIKOさんを呼んできて、見せる…(笑)」と当時の様子が伺えるお二人のやりとりに観客も思わず笑み。試行錯誤しながら演出に挑んでいた事を明かしていました。 「会場のスケールが図面上はわかっていても、身体感覚として無かった」と振り返る石橋さん。当時は今までやったインスタレーションとサイズ感が違うことに、戸惑いを隠せなかったようです。

そして、2013年に開催され、国外でも話題になった「カンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバル」の話へ。Perfumeのダンス・衣装に合わせてプロジェクションマッピング技法を用いたパフォーマンスについて。

演出振付家のMIKIKOさんからもらった演出アイデアを実現するために、YCAM(山口情報芸術センター)での滞在制作でブラッシュアップを行ったライゾマチーム。「ファンとクリエイターでグラフィックを創りプロジェクションマッピングする」「衣裳を動かす」という難易度の高い技術にトライします。

ドレスメーカーさんとひとつひとつ検証していったPerfumeの衣裳はまるで折り紙のような美しさ。「ショーのモデルが着るものとダンスするパフォーマーが着るものはまた違うから、シビアに制作した」と石橋さん。大きなステージで難しい課題をクリアしていくプロセスに観客席も聞き入っていました。


続いてライゾマの最新のお仕事を紹介。センサーとドローン(小型無人航空機)を使ったダンスインスタレーション「モザイク」の演出を紹介してくれました。

滑らかにダンサーの上を浮遊する様は、ピラミッド型のUFOのようです。ドローンは「四角錐がついてない状態」からスタートしましたが、作品のコンセプトと結びつけるために四角錐をつけたいというオーダーが入り、取り付けることに。真鍋さん曰く、「結果、不安定になったけどそれが面白くなった」。ドローンは制作途中、コンピュータ制御のプログラムでは、きっちり揃った機械的な動きとなってしまうため、ドローンの動きをレコーディングするシステムを開発。ドローンを持ってダンサーが動いた軌跡を使うことで、有機的な動きの表現を可能にしたそうです。

真鍋さんはメディアアートならではの醍醐味をこう語ります。「ダンサーと映像のインタラクションは、やりつくされている。ARやVRだけではなく、ダンサーと実世界でリアルにインタラクションするオブジェクトを使う仕組みを考えていきたい。ドローンを使ったのも、その考えがベースにある」。また「新しい技術を用いたアイデアを演出振付家に見せ、ディスカッションして即興でダンスをつくってもらう。この瞬発力が受け入れられているのは、恵まれているなと思うし、技術デモを表現に昇華してくれるMIKIKOさんの力に常に助けられている。普通の演出家・振付家だと技術に引っ張られてしまうことが多いのだけど、技術を使う理由をきちんと紹介してくれる。」と自身の環境についても振り返りました。


こうしてライゾマティクスの仕事をみて感じるのは、圧倒的な完成度やボリューム感、そして新しい仕組みづくり。にも関わらず、それを実現させるタイミングはとてもスピーディです。

スケジュールが短いほど、実現性を重視して「今回はここまで」と、はじめから出来る範囲でのゴール設定をしてしまいがちです。そうなると仕事の仕方は合理的になっていきますがクリエイティビティに影響がでるという懸念も 。ライゾマのお二人はどうやって仕事を進めているのか、司会が質問を投げかけます。

「仕事によってはリハーサルの時間が限られていたり、制約があるなかで効率のいい方法をとる場合もある。そのなかでどれだけ面白いことを出来るか。逆に長期でスタジオを借りて、テスト繰り返すような作業は効率としてはどうしても悪くなってしまう。両方あると思う」と真鍋さん。

「色々チャレンジするためには、一個一個の結果が短時間でわかれば、その他のケースも多く試すことができる。試したいときに最短の時間でテストするようにしている」と石橋さん。沢山のプロセスを踏むことは必要ですが、自分の過去のデータや経験を生かして、どのように創り、何を使えばいいかを取捨選択しながら効率をあげていく。そんな現場の様子が伺えます。


次に、ラボでの取り組みについて話が移ります。

その前に、タイトルにもなり、トークのキーワードにもなっている「ラボ(ラボラトリー)」について。真鍋大度氏と石橋素氏率いる「ライゾマティクス」は、2008年に研究・創作スペース「4nchor5 la6(アンカーズラボ)」を開設。「チームでも個人でも戦えるアンカー達がひっそりと集い、何かを生み出し続けるための場所」として少数精鋭のクリエイターが集まる場所を作りました。これが今回の「ラボ」を指しています。今までのプロジェクトも、ラボでの研究開発やチームづくりがもとになって作られたものばかり。

アイデアを思いついたときに、どのようにラボを活用しているのでしょう。「ラボではまず小さなプロトタイプを作り、実験し、大きなスタジオを借りてスケールアップさせていく」と、真鍋さん。では、スケールアップさせる段階で、様々な問題が生じたとき、メンバーでどうジャッジしていくのか、の質問に「去年はそういったジャッジが必要でこの環境では出来ないと判断し、諦めなければいけないこともあった。もっと理想的な環境では出来るけど、この場所ではできないとかね。時間をかけているのでもったいないけれど、出さない勇気も大事だと思っている。」と語りました。

実験していく中で、アイデアの引出しは今どれくらいあるんでしょう?と司会に尋ねられると「(アイデアは)17個」とコメント。テスト検証をしたり、誰でも使えるようなツールを使い、汎用性を上げていろんな場面でも対応できるような形にまで仕上げていく。そういう姿勢だからこそ、この数字なのでしょうか。

また、最近注目している技術は?の問いに、「(調査資料を見せながら)生体データと機械学習、ディープラーニングなどを用いた人工知能ネタに、最近興味あります」と説明する真鍋さん。NEVERまとめでもアップされているように、真鍋さんは研究論文や美術史など様々な調査(サーベイ)資料をもとに制作しています。機械学習についても専門家の方にインタビューして調べたり、学生の力を借りて資料を作成しているそう。


創造都市であるここ札幌。もしも、この札幌にライゾマティクスを移動させるとしたら…?という質問に、「滞在制作できる場所はあるんですか?」とお二人とも興味をのぞかせます。東京にいるメリットについて質問が及ぶと「だんだんなくなってきている。最近では、筑波の宿泊施設のあるスタジオを使っていますから」と真鍋さん。今後、札幌に使いたい施設が出来れば、ライゾマティクスをはじめとする多くのメディアアーティストが札幌に集まるかもしれません。

札幌という場所で制作するなら、どんなことをしたいか?には、「モエレ沼公園の草原でなにかやりたい」「自然とメディアアートでなにかしたいですね」とお二人。「札幌は、まだラボという概念は馴染みが薄い。研究・実験・開発・発表していく施設が必要ではないかと思っています。いつかライゾマティクスにも札幌に滞在制作に来て欲しい」と司会の小町谷さんも今後の札幌について語ります。

司会の小町谷さん、石田さんが大学教員ということもあり、学生の観覧も多かった今回のイベント。最近では、メディアアートのジャンルを志す人が増えているそう。トークショーの最後に、学生へ向けてのメッセージを聞かれ、真鍋さんは、手を動かしてつくることの大切さと心構えについて語ってくださいました。

『日本メディアアート史』(馬定延[マ・ジョンヨン] 著)という本があるのですが、読んでみると30年前のメディアアート史を語っている内容が、今とほとんど変わらない。これより新しいことをそんなにすぐは考えられないだろうなと思うんですが(笑)。時代が追いついたといったら偉そうですけど、今はメディアアートにとって、とても良い時代になってきた。ここにいる学生さんも学校で新しいアイデアや作品をつくって発表する機会があると思うんだけど、手を動かすより悩む時間のほうが多くなってしまうということには、ならずにいてほしい。僕はIAMAS(国際情報科学芸術アカデミー)にいたとき、プレゼンの度にへこんでいた。今思えば、気にせずにガンガンやればよかったな、と。Twitterで、意思表明しているやつを見かけると『それはいいから!とりあえず作ろうよ』と思う。(クリエイターは)作品でしか評価されないんだから。」

自身が悩みながらも、「まずは作ってみる」ことを続けたことで道が開けた経験があるからこそ。このコメントに大いに刺激を受けた学生さんも多かったのではないでしょうか。今後ますます目が離せないライゾマティクス。全体を通して、ラボという概念の重要性を参加者が共有できる充実したトークでした。


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ゲストプロフィール

真鍋大度/Daito MANABE
プログラマ/アーティスト

1976年生まれ。東京理科大学理学部数学科卒業、国際情報科学芸術アカデミー (IAMAS) DSPコース卒業。2006年にウェブからインタラクティブデザインまで幅広いメディアをカバーするデザインファーム「rhizomatiks」を立ち上げ、2008年には、石橋素とハッカーズスペース「4nchor5 La6」(アンカーズラボ) を設立。

ジャンルやフィールドを問わずプログラミングを駆使して様々なプロジェクトに参加。ars electronica、eyeo festival、resonate、OFFF、FITC、Transmediale、EXIT、Scopitone Festivalを始めとした海外のフェスティバルにアーティスト、スピーカーとして参加。Prix Ars Electronicaでは2009年度審査員を務め、2011年度インタラクティブ部門準グランプリ受賞、2013年度インタラクティブ部門栄誉賞受賞。文化庁メディア芸術祭においては大賞2回、優秀賞2回、審査委員会推薦作品選定は8回を数える。

2010年よりPerfumeの演出サポートを担い、ディレクションを担当したPerfume Global Site Projectはカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル、サイバー部門にて銀賞を受賞。データ解析とインスタレーションを担当した「Sound of Honda/ Ayrton Senna1989」が2014年カンヌライオンズでチタニウム&インテグレーテッド部門にてグランプリを受賞、8部門でゴールド6つ、シルバー6つを含む15の賞を受賞、2014年D&AD賞で最高賞であるブラックペンシルを受賞。米Apple社のMac誕生30周年スペシャルサイトにてジョン前田、ハンズ・ジマーを含む11人のキーパーソンの内の一人に選出されるなど国際的な評価も高い。

 

石橋素/Motoi ISHIBASHI
エンジニア/アーティスト

1975年生まれ。東京工業大学制御システム工学科、国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)卒業。4nchor5 la6を真鍋大度と共同主宰。ハードウェア制作を主軸に、様々なプロジェクトに参加している。デバイス制作を主軸に、数多くの広告プロジェクトやアート作品制作、ワークショップ、ミュージックビデオ制作など、精力的に活動行う。

工業用刺繍ミシンを使った『Pa++ern』や産業用ロボットアームを使った『proportion』など、ロボットを取り入れた作品。『Lenovo』『ラフォーレグランバザール』TVCMへの作品提供。やくしまるえつこMV『ルル』『ノルニル』『少年よ我に帰れ』に参加。『perfume 3rd tour -JPN-』武道館追加公演にてLED衣装制作。多数の作品がメディア芸術祭審査委員会推薦作品に選定。2011年 第15回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞。2011年 Prix Ars Electronica インタラクティブ部門準グランプリ受賞
 

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ラボから生まれるアート -ライゾマティクス-

日時:1月20日(火)19:00~21:00(開場は18:30になります。)
場所:MIRAI.ST cafe
北海道札幌市中央区南3条西5丁目1-1 ノルベサ1F
入場料:無料(キャッシュオンスタイル)
主催:札幌大谷大学,札幌市立大学
協力:MIRAI.ST cafe

ゲストスピーカ:真鍋大度+石橋素(ライゾマティクス)

司会:小町谷 圭(札幌大谷大学 美術学部)
石田 勝也(札幌市立大学 デザイン学部)

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レポート:小島歌織
撮影:大場優子