移転オープンへ ー 代表の川上大雅さんに聞く、cojicaの今までとこれから

2010年、札幌の北3東2にあるビルの1階に誕生した「salon cojica」。ほどなく、企画ギャラリーとして、札幌の現代美術作家たちを内外へ向けて紹介し始めます。2013年にいったん移転準備に入った後、2014年12月、北24条に移転オープンを果たします。より発信力を高めるとともに、弁護士・ギャラリーオーナーの二つの顔を持ちながら歩み続ける川上さんに、「salon cojica」への想いとこれからのビジョンを伺いました。

 

ー まず、川上さんが現代美術に興味を持ったきっかけを教えて下さい。

大学生の頃、北海道立近代美術館で見た宮島達男さんの作品に衝撃を受けたのが始まりですね。現代美術に興味を持ち始めた当時から、作家をサポートする何かができたらという想いがありました。そのために、CAI現代芸術研究所の夜間アートスクールに通い始めました。本業である弁護士の仕事を始めて一年目のことでした。

 

ー salon cojicaはどのように立ち上がったのでしょうか?

CAIに在籍していたころ、2010年だったと思います。スクール生の同期たちと「自分たちの場所があればいいのに」とよく話していました。そのタイミングで、たまたま、カラオケスナックを居抜きで使う人を探しているという話を聞いて、すぐ場所を借りました。ギャラリーにするということも考えず、ひたすら、掃除をしたり、改装みたいなことをしたりしていました。
結局、自分たちの手ではやりきれなくて、建築士さんにお願いして根本的に改装をしてもらって、「salon cojica」を2010年にオープンすることになりました。
この改装を手がけてくれた建築士の一色玲児さんには、現salon cojicaの設計もお願いしました。
特に、ギャラリーにするとは決めていませんでした。結局、半分くらいは自分たちで企画したり貸したりして、だんだんとギャラリーのような形態になってきました。だけど、とっても大変で…。
1年間運営してみて、気づいたら、同期生たちはみんな離れてしまって、自分ひとりになっていました。

 

 

ー その、1度目のリニューアルオープンに至った経緯を教えて下さい。

継続するかどうか迷いました。だけど、ここで展示をしたいという作家も増えていたし、オープン以来この場所を支えてくれた作家たちを、もう少し深く支えられたらと思うようになりました。美術に興味を持ったときの原点に返った感覚です。そのためには、前よりしっかりとしたギャラリーにならなくていけないと思ったんです。
それから、取扱う作家もだんだんと増えていきましたし、作品の扱い方も少しずつ覚えていきました。

 

ー そのような思い入れのある場所から離れ、現在の北24条に移転することになった理由は?

きっかけは、salon cojicaが入っていたビルの老朽化でした。やむを得ず次の場所を探し始めたのです。
そして、ギャラリーとカフェが一体化しているために「ここはギャラリーなのか、カフェなのか、」という制約が目立つようになってきました。内装を何度も変えたり、壁面を立て直したり、試行錯誤をしましたけど、最終的には解決しきれない制約のようにも思えてきて、場所に対する限界を感じることが多くなっていたように思います。

そこから約二年間、場所探しを続けていました。その間に、これでもかという程いろんなことが起きましたが、最終的に、「これはもう自分で建てるしかない」と決心しました。
もともと僕は弁護士でしたから、それも合わせてひとつのスペースを作ろうと考え、「salon cojica」「COJICA COFFEE」「札幌北商標法律事務所」の入る「coneco bld.」として、また新たなスタートを切ることになりました。始めた頃は、今の状態を想像すらしていませんでしたね。(笑)

 

ー 印象的な名前の「cojica」は、どのように命名したのでしょう?

スペースの名前をつけるとき、CAIの同期生で居酒屋に集まって話し合っていたら、目の前にあった焼酎のラベルがたまたま「山ねこ」と「小鹿」だったんです(笑)。響きからいって「やまねこ」と「こじか」なら「こじか」かな…?じゃ、「こいぬ」は?「こねこ」は?という具合に上げていった結果、おさまったのが「こじか」でした。「こねこ」は今回、建物名になってますね。そういえば(笑)。

 

 

ー スタート当初から併設していたカフェについて。現在の「COJICA COFFEE」までの流れはどのようなものでしたか?

当初は僕自身がネスプレッソでコーヒーを出していたくらいなので(笑)、カフェへそこまでこだわりがあったわけではありません。前にリニューアルしたとき、「カフェがあればギャラリーを開けておける」と考えて、カフェスタッフを募集したんです。最終的にカフェスタッフは3人になりました。
3人は、だんだんと、カフェのみならずギャラリー運営も含め、cojicaの全部に関わってくれるようになりました。ART OSAKAでも、コーヒーを淹れたりしていました。
3人は、場所をつくっていく上で欠かせない存在になっていきましたので、さらにカフェ自体もクオリティを上げ、「COJICA COFFEE」として、ともに新たなスタートを切ることに決めました。

 

 

ー 新生「salon cojica」に込められた想いや今後のスタンスを教えて下さい。

これからは、本当に来たい人さえ来てくれればそれでいいという気持ちもあります。閉じる必要もないけど、無理して開いていく必要もないのかなと思っています。 それよりも、ギャラリーとして、作家が自分の力を出す機会を、継続的に積み上げていくことが大事になると思っています。
また、今後は、外から作家を呼ぶことも増えると思います。滞在も前より楽にできるように整えました。じっくりと製作に向き合ってほしいという思いがあります。
その他のスタンスは、今までと変わらない気がします。作品や空間を、一番最初に見られるということは、ギャラリーをやっていく中でのひとつの特権だと思っています。これからは、やっと、作品に一番近いところで生活していくことができそうです。やりたいことに集中できる環境が整ったのかなと思います。

 

ー「salon cojica」が抱える作家はどのように選んでいますか?

こちらからお願いをすることももちろんあります。ですが、選んでいるというよりは、自然に集まってきた作家たちを一生懸命支えているという感覚の方が強いようにも思います。関わる人たちとは、自然と深い付き合いになっていきます。作品のこと、展示のこと以外にもたくさんの話を聞かせてもらっています。取扱っている作家に、cojicaのカラーがあると言われることがあります。自然に集まってきているものが、cojicaのフィルターを通じて出てくると、色彩を帯びていくのかもしれないですね。

 

 

ー 企画ギャラリーとして、道外のアートフェアやイベントに参加し、作家を積極的に発信していますね。

作家にとって必要であれば、何でもします。東京や大阪などのアートフェアにも参加してきました。札幌って、展示する場所は案外たくさんあって、どこでも展示ができちゃって、循環する仕組みすらなんとなくできちゃっています。どこのスペースでも、同じ作家の作品が見れるというのは、他の地域と比べても特殊なことかもしれません。案外悪くない環境だと考える作家もいるでしょうし、それはそれでひとつの形ではあるかとは思います。
札幌は良くも悪くも閉じている部分があるので、札幌の中で全部成立させることもできちゃいます。アーティスト風、ギャラリー風な装いをするのは案外簡単だったりもします。
だけど、それって、外からは全然見えてないという一面もあったりして。
だから、そこにとどまらないで、一歩進みたい、次のステージに進みたいと思っている作家に、できる限りのサポートをしていくことが必要かなと思っています。作家だけだとなかなかできないことなので。 そうでないと、いい作家たちが、近くで作品を作ってくれなくなってしまうという危機感もあります。
とはいえ、最近は、アートフェアすら乱立しちゃってます。 そんな時代に、ギャラリーを続けていくことの意味はいつも考えています。

 

ー なかなか札幌では見ることのできない道外の現代美術作家の展示も手がけていますが、ご自分で作家にオファーをされるんでしょうか。

自分で探しにいったり、ご縁をいただいたりということももちろん多いです。道外での発表の機会も増えてきているので、札幌にこういうギャラリーがあると知って見に来て下さる道外の作家もいます。少しずつネットワークというか、つながりが増えてきているかなと思います。


 

ー ギャラリーの代表の他、弁護士・弁理士としても活躍されていらっしゃいます。

今までは、事務所とギャラリーとがバラバラだったので、大変でした。行き来だけでも大変でしたし、結果、どちらも中途半端みたいなことになりそうな時期もあったように思います。今は、集約されてやっと落ち着いてきた感じです。仕事でもギャラリーの運営でも、一度出会うと、長いお付き合いになる場合がほとんどです。「最後まで寄り添い続けること」は、大事にしていることの一つです。人と深く関わり、そこから信頼関係が生まれていく。そのわりにメールのやりとりはとっても苦手だし、すぐ音信不通になるタイプなのですけどね(笑)。
自分からやろうとしたことって実はそんなにないんです。ぼんやりと、こんなことやりたいなー、やらなきゃなーと思っていたら、いつのまにかこんなことになっちゃってた感じ(笑)。

salon cojicaを始めて4年ほどになります。これから先、いい時も悪い時もあると思います。悪い時にいかにあきらめ悪く続けられるかが大事だと思っています。もう、続ける覚悟は決めちゃっているので、どんな形になっても、ずっと自分は、「salon cojica」をやっているんだと思います。

 

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salon cojica 代表 川上 大雅(かわかみ たいが)
1980年札幌生まれ 
札幌北商標法律事務所 弁護士・弁理士 / salon cojica 代表
企業法務および知的財産を中心に取り扱っている。
スキーを最近また始めた。

 

salon cojica
北海道札幌市北区北23条西8丁目 coneco bld. 1F
tel.011-700-0700 fax. 011-700-0701
営業時間 11:00~19:00(その他の時間はアポイントください)
休廊日  日・月曜日
http://www.salon-cojica.com/
取扱い作家 武田浩志、風間雄飛、樫見菜々子、鈴木悠哉、南俊輔ほか

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開催中の展示
「3回目のはじめてに from the first to the third」

会期:2014年12月13日(土)~2015年1月31日(土)11:00~19:00
休廊:年末年始・日月
出展作家:青山裕企、有本ゆみこ、いそのけい、今村遼佑、小野翔平、風間雄飛、樫見菜々子、クスミエリカ、鈴木悠哉、武田浩志、田中佐季、pater、前田ひさえ、南俊輔 ほか

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インタビュー:山本曜子
撮影:門間友佑、小島歌織、山本曜子