札幌国際芸術祭の新しい拠点がオープン

2014年7月19日から72日間にかけて札幌ではじめて開催された札幌国際芸術祭2014。ゲストディレクターに坂本龍一氏を迎え、市内18会場を舞台に64組のアーティストによる作品が展開された。札幌国際芸術祭は「都市と自然」を基本テーマに3年に1度、芸術監督を迎えて開催を予定しており、次回開催へ向けた活動の拠点として、雪まつり会場としても有名な大通公園の西端にある札幌市資料館内に、SIAFラウンジとSIAFプロジェクトルームの2室をオープンした。

札幌市資料館は大正15年に札幌控訴院(今で言うところの裁判所)として札幌軟石を使って建てられた建造物で、1997年には国の登録有形文化財に選定された。その後、裁判所の移転に伴い札幌市資料館として開館。札幌の歴史を紹介するとともに、市民が利用できるレンタルギャラリーなどを併設し運用されている。今回その中の2室を札幌国際芸術祭の拠点とした形だ。

札幌市資料館は札幌国際芸術祭2014でも会場の1つとして「SIAF2014 アクティビティ拠点プロジェクト」と銘打ち、インフォメーションセンターやカフェなどを設置。来場者が気楽に過ごせる空間とともに、深澤孝史によるとくいの銀行 札幌支店since1869/札幌市開開拓資料館や冨田哲司がコーディネートを努めたサッポロ・エホン・カイギなど来場者や市民が参加することで完成するアートプロジェクトが複数展開された。またボランティアセンター機能も有し、多くのボランティアスタッフが札幌市資料館を基点として動くなど、アーティスト・来場者・ボランティアが混ざりあう空間となっていた。

こういった使い方を延長するかのように今回オープンしたSIAFラウンジとSIAFプロジェクトルームは、より多くの市民が札幌国際芸術祭に関心をもち、理解を深めるきっかけとなる場を目指してオープン。ここでの取り組みを通して、芸術祭の様々な担い手を繋ぐ拠点となることを目指している。

札幌市資料館1FにオープンしたSIAFラウンジは過去の札幌国際芸術祭の記録や関連書籍が閲覧できるライブラリーを兼ね備えたインフォメーションセンター。札幌国際芸術祭の記録はもちろん、様々な芸術文化に関する書籍が所蔵されており、気軽に立ち寄り交流できるスペースとして機能する。wifiや電源も完備しているので簡単な打合せなどにも利用できる。2FのSIAFプロジェクトルームは、次回の札幌国際芸術祭へ向けてワークショップやレクチャーなどを実施、そこでの活動を披露する展示スペースとしても活用される予定だ。

SIAFプロジェクトルームはプログラム実施時のみオープン。現在予定されているものでは7月4日・5日にここで行われるプログラムの解説と次回札幌国際芸術祭へ向けた展望について参加者と話し合う「SIAFパブリックミーティング」を開催予定だ。1FのSIAFラウンジは本日4月28日よりいつでも利用可能(9:00~19:00/月曜定休)。

現代美術の祭典であるビエンナーレ(2年に1回)やトリエンナーレ(3年に1回)は、現在日本各地で行われている。横浜トリエンナーレやあいちトリエンナーレなどが有名だが、今年初開催されたPARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015や、先日2016年初開催が発表されたさいたまトリエンナーレなど、まさに1地方都市1芸術祭の勢いだ。

フェスティバルが行われている期間は多くのアーティスト作品が並び、来場者や参加する市民も盛り上がりを見せるが、開催期間外はどの都市でも準備に当てられている。その準備期間で行われる取り組み如何によって、芸術祭がただの一過性の祭りになるのか、街の文化を育てていく存在となるかが大きく変わってくる。今回の札幌での取り組みが今後どのようになっていくのか、今後注目していきたい。

 

レポート:カジタシノブ
写真提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 国際芸術祭事務局
     photo by Erika Kusumi