• NEVER MIND THE BOOKS 2015 開催決定! - つくるを楽しむ「ZINE」のススメ


    2011年、札幌のデザイナー菊地和広さんが衝動的に個人で主催したZINE(インディペンデント、自費出版の小冊子)販売イベント、「NEVER MIND THE BOOKS」。その後、回を重ねながら札幌の恒例ZINEイベントとして定着しつつあり、2014年は道外のZINEイベント団体との交流を行い、その活動の幅も広がっています。
    今年も7月20日海の日に、4回目の開催が決定。主催者であり、つくり手でもある菊地さんに、ZINEのおもしろさやイベントについて伺いました。

    —札幌でZINEのイベントを始めたきっかけを教えて下さい。

    もともと、紙媒体での表現が好きだった僕は、フリーペーパーみたいな紙もの作品をいろいろつくっていたんです。それをゲリラ的に配ったり売ったりしていたんですが、2009年から東京で行なわれているZINEの一大イベント、「THE TOKYO ART BOOK FAIR」(*1)に作り手として参加したことが、「NEVER MIND THE BOOKS」のそもそものきっかけになりました。自分のつくったZINEを直接お客さんに販売するという体験が新鮮で、すごく楽しかったんです。

    なかでも面白いエピソードがあって。「THE TOKYO ART BOOK FAIR」は数日間開催され、販売会場では数多くのブースが設けられてたくさんの出店者が並びます。僕は初日から行って、それなりに頑張ってつくったものを持ち込んで売るじゃないですか?でもそうそう売れないわけですよ。あるときふと自分の隣のブースを見たら、その場でZINEをつくっている人がいたんです。間に合わなかったのかなんなのかわからないけど(笑)、手を動かしながら、売りながら、ということをやっていたのが印象的でした。
    翌日2日目の朝に、たまたま「なでしこジャパン」が優勝したというので街が沸いて、号外が出ていた。その号外を一応もらって、かばんにしまって会場に向かいました。そして会場でまた周りがZINEをつくっているのを見て、「俺もやりたいな」って思った。そこで、もらった号外を折って、はさみで切って、めちゃめちゃにいたずら描きしてホチキスで留めて売ってみたんです。即興で。そしたら売れたんだよね〜!(笑)むしろ自分でつくってきたものよりも反応が良くて「うわー、これって成立しちゃうの?」と。もうめちゃくちゃだよね(笑)。


    —世界にひとつのアートブックという扱いになったんでしょうね。

    そう。そういう感覚は今までなかったから、これが成り立つとわかって、すごく面白くなってきたんです。そして、こういったZINEイベントを自分でやりたいなと。札幌でも「THE TOKYO ART BOOK FAIR」に参加する人が増えてきたし、ある瞬間に「もしかして、自分でもできるんじゃないか」っていう衝動が生まれてきた。
    そのベースには、色んな展示やイベントに参加したり観たりするうちに抱いていた「札幌は観る側としてでなくプレイヤーとしてなにか作りたいと思っている人が意外と多いのではないだろうか?」という感覚があって。もしそうなら、ZINEイベントは札幌にぴったりかもしれないと思ったんですよね。

    —その衝動とイメージから、初めてのZINEのイベント「NEVER MIND THE BOOKS」を開催するわけですね。

    やろう!と突発的に思い立って、決めてから開催まで2週間という短期間で、準備から人を集めることから基本一人でやりました。我ながらよくできたなと。とはいえ、知り合いもいないし、参加者をどうやって募集したのかも覚えていないです(笑)。ATTIC(*3)で開催した初回は、出店がZINEでなくても良くて、つくっているものを販売するというイベントでした。最初は、出店の応募が5組くらいしか来なかったらどうしよう?と不安もあったものの、急な募集にも関わらず15組ほどが参加してくれたんです。お客さんの入りも良くて、盛況に終わりました。
    今でもそうだけど、周りがすごいというか偉いというか、参加から手伝いから、いろいろとやってくれるんですよ。この土壌に感謝しなければといつも思ってます。

    —初回の手応えを感じて、その後もZINEイベントを継続しようと?

    とりあえず一人でやってみて、良かったなぁとのほほんとしていたら、思いがけず好評で「またやらないの?」という声が多かったので、次のイベントの構想をあたためていた。その頃、ZINEのつくり手でもあるデザイナーの3人と「一緒にイベントをやりたいね」と話していたんです。
    その構想を、札幌の大人気マーケットの「LOPPIS」(*2)さんの運営チームに話したら、「NEVER MIND THE BOOKS」をもう少し大きくちゃんとした形でイベントにして、一緒にやりませんか?と誘ってもらえたんです。デザイナーの3人を実行委員として迎え、ひとまわり大きなイベントとして2013年、「LOPPIS」さんとともに二回目の「NEVER MIND THE BOOKS」を開催しました。

    -NEVER MIND THE BOOKS 2013の会場風景

    —「LOPPIS」さんと同時開催してみて、反響はいかがでしたか?

    「LOPPIS」さんそのものにお客さんがたくさん来てくれて、大盛況でした。そこからの流れで「NEVER MIND THE BOOKS」も賑わっているように見えたし、僕自身も「僕らのイベント、すごく盛り上がってるな!」と満足していました(笑)。
    出店者は前回の倍に増えて、30組を越えました。イメージはあったものの、正直、札幌に、こんなにつくり手がいるんだ!と思うくらい。この回から、実行委員によるチョイスの委託ブースも設けています。

    —出店者の方たちがとても個性豊かで、お客さんも自分のお気に入りを見つける楽しみがありますね。

    うちのイベントは紙もの作品さえ出していれば、小物や雑貨、パブリック的な商品も販売OKなので、これにめがけて、小さい冊子をつくってくるお店、個人も多い。参加者の幅が広いんです。層としては個人からお店、ギャラリーなども出してくれているし、ジャンルとしてはアート、デザイン、写真、音楽、漫画…とさまざま。年齢は、高校生以上であれば参加OK。プロのデザイナーの方が参加してくれているのもいい。お客さんにとっては見応えがあるし、参加者同士ではつくる刺激になる場。札幌だけではなく、道内、道外からの出店者もいます。
    今年も5月末まで出店者を募集しているので、ぜひふるってご応募ください。

    —2014年は「NEVER MIND THE BOOKS」単体で、テレビ塔での開催でしたね。

    「年に一回開催」というスタンスを意識しているわけではないものの、なんとなく「去年はこうやったから、今年はどうしよう」「あれをやってみたい」って気持ちが出てくるんじゃないかな。イベントって、一回きりとか、すぐ終わったとかいうのはちょっとしゃくだし、続けてこそだと思っていて。「LOPPIS」さんとの回が終わった時点で、次は純粋に自分たちだけで場所を借りてやろうと思ってたので、ずっと狙っていたテレビ塔での開催を決めました。
    僕は個人的にテレビ塔がすごく好きで。昔から普遍的にあるけれど、あまり行く機会がない…そんなごく普通のところで、展示でもイベントでもいい、何か文化的なことをやりたかった。「NEVER MIND THE BOOKS」をやり始めたので、ちょうどいい、ここでやろうと。

    イベントを開催するにあたっては、この場所でこんなことをしたいというような、着眼点が大事だと思っています。それがイベントの顔になったり、自分のカラーになる。僕はそういうアイディアを普段から、しめしめとね、ストックしてるんです(笑)。しかもテレビ塔って電波にかかわってるし、いいぞ、ここから札幌に電波を発信するつもりでやろう、と。適当な感じですけど(笑)。

    -「10zine」をゲストに迎えて、福岡のZINEを販売

    —2014年の開催を振り返ってみていかがでしたか?

    前年「LOPPIS」さんと同時開催したことが妙な自信になって、僕個人は、これはいける!と思ってました。他の実行委員は不安だったらしいけど(笑)、フタを開けてみたら、なんと50組も出店してくれて、さらに規模が大きくなりました。しかも、毎回そうですが、面白いなあと思うものをつくっている方がたくさんいる。
    前回は、ご縁ができた道外のZINEイベントと交流を持てたこと、それぞれのイベントに参加しあえたことも大きな収穫でしたね。福岡でイベントを行っている「10zine」さん、浜松でワークショップを行っていた「ZING」さんをゲストとしてお呼びしたり。僕らも視察をかねて行ってきたんですが、すごくよかったんですよね。それぞれ地方色を活かした、とてもクオリティの高いイベントでした。参加者さんたちの、自分の考えているものを紙に定着させる力がすごくて、つくり手としてもたくさん刺激を受けた。地方でやっている人たちの存在が、札幌でまだまだ出来ることがあるんだという自信に繋がりましたね。

    —つくり手でもある菊地さんにとって、ZINEの魅力とは?

    やっぱり、最初に話した、いたずら描きしたものが普通に売れてしまうって言うことに集約されていると思う。感性だけで勝負できる。だって普通に生活していたら、そんな状況ってなかなかないでしょ?そういう感覚を味わえることですね。
    それと、ZINEは手書きでも、印刷でも、コピーでもつくれる。いろんな手法が使えて、表現の振り幅がある。一枚の紙をポンと与えられた時に、自分が何をつくれるだろう?と考えるのも楽しいです。
    ZINEをつくったことがない、またはやってみたいけどなかなか…という人も、手を動かしてつくってみるとわかることがあるので、是非やってみて欲しいですね。なんだったらもう何も考えないで、その場でつくってもいいわけだし、そういう方もいますね。たぶんね、あれは間に合わなかったんだと思う(笑)。

    うちのイベントは対面販売だから、ダイレクトにお客さんから反応をもらえるのもいいんです。手売りって、結構ビビるででしょ。最初はお客さんとうまく話せないとか、どうしたらいいの?っていう体験も、後から、こういうとき自分だったらこうするんだなって客観的に思い返して楽しかったり、刺激になったりする。
    お客さんとしてイベントを楽しんでもらうのはもちろん歓迎。ただそれ以上に、つくり手として参加して、手売りをするということがすごく楽しいので、絶対にオススメですね。売り手さんには、自分のブースをあけっぱなしでよそに行っちゃってる人もいる。なんでもいいわけですよ、もはや。それが面白いっていうのもある。イベントを開催する時期はテレビ塔の下でジンギスカンをやってるからそれめがけて来てもらってもいいし。もはやZINEと関係なくなってますね(笑)。

    -浜松からのゲスト「ZING」が行ったワークショップ

    —つくることと売ること、どちらも楽しめる場でもあるわけですね。

    そうです。かといって、「自分で、手でつくることが大事!」という意識もあまりない。僕がつくっていて気持ちのいいものって感じかな、とくにメッセージ性はないんです。ただ、ZINEっていうものが文化の中にあるなら、その面白さを伝達したいなという感覚でやってます。僕も、一応代表だけど、肩の力を抜いて楽しんでいます。
    ちなみに去年はZINEづくりのワークショップを開催したんですけど、参加してくれた小学生の男の子の作品に嫉妬した(笑)。もう自由に衝動的につくっているんだけど、発想がすごくって、天才だ!って思いましたね。

    —印象的なイベントタイトルは、初回に菊地さんが命名されたものですか?

    はい、ピストルズのアルバムタイトルですね。ダジャレ。反骨精神とか全くない。行き当たりばったりな命名をしてしまって、ちょっと長かったかなと後悔していますが、これにしてよかったと思うのは、自分達のカラーが出ているところですね。ぱっと見、ZINEのイベントなのかどうかわからないのもいい(笑)。僕は個人的に、このイベントがマルシェまで進化していってもいいと思っているんですよね。いかようにも変化していけるなと。

    —7月20日、海の日の開催。4回目となる今回も、テレビ塔での開催です。

    もう三年、だけどまだ三年。常日頃考えているアイディアをこれからどう形にしていくかがテーマだなと。今年も海の日一日限りで、テレビ塔の2階に、幅広くいろんなZINEが集結します。ジャンルを問わない、紙っていうものを通しての発表の場ですね。自分も参加者として楽しみです。
    19時半までやっているので、おでかけのついでにでも立ち寄ってみてもらえたら。ちなみに、テレビ塔の2階はかなり高いところなので、階段ではなくエレベーターに乗ってきて下さいね。

    NEVER MIND THE BOOKS 2015
    日 時:2015年7月20日(月・祝)11:00 – 19:30
    会 場:さっぽろテレビ塔2F しらかば・あかしあ・はまなす(札幌市中央区大通西1丁目)
    入場料:無料

    出展参加者募集中【2015年5月29日(金)まで】

     

    *1 THE TOKYO ART BOOK FAIR
    2009年から毎年定期的に東京で開催されている、現在アジアで最大規模のアートブックに特化したブックフェア。日本で本にまつわる活動を行う UTRECHT とロンドンのクリエイティブチーム PAPERBACK によるZINE’S MATEが主催。国内外のアートブックやZINEの発行者が直接プレゼンテーションする機会を目的に開催。2014年には出展者数350組、来場者数1万人を超える大きなフェアに成長。アーティストや出版社が一同に集結し、進化を続けるアーティストブックの世界観を体感することができる場となっている。

    *2 LOPPIS
    札幌を中心にした北海道各地のインテリア、雑貨ショップ、カフェ、ベーカリー、手工芸作家が集う、豊かなライフスタイルを提案する週末マーケット。2010年のスタート以来人気を博し、札幌のみならず道内各地で出張マーケットも行っている。2015年は札幌盤渓スキー場で6月5日(金)〜7日(日)開催。

    *3 ATTIC
    札幌の狸小路裏のビルにあったフリースペース。展覧会、ライブ、上映会など、サブカルチャーを中心に多種多様なイベントを開催していた。2013年12月に惜しまれつつ閉館。


    菊地 和広/Kazuhiro KIKUCHI
    1974年生まれ、札幌在住。
    2010年より“バックヤード”の屋号でアートディレクションとデザインを手掛けつつ、
    自主制作のZINEやグラフィックポスター、オリジナルプロダクトなどの制作活動もおこなう。
    NEVER MIND THE BOOKS代表。

    インタビュー:山本曜子
    撮影:minaco.(footic)、NEVER MIND THE BOOKS事務局、山本曜子
    撮影協力店:寿珈琲

  • 札幌軟石造りのスペース"HUG"がオープン - 展覧会を開催中の美術家 東方悠平さんに聞く

     

    2015年3月、大通公園からほど近くにオープンした北海道教育大学によるアーツ&スポーツ文化複合施設 Hue* Universal Gallery、通称HUG(ハグ)。*Hue=Hokkaido University of Education

    札幌軟石を使ったこの建物は、1931年(昭和6年)に八百屋問屋の貯蔵庫として建造され、その後も倉庫やカフェなどに姿を変えながら今日まで残されてきた街のシンボル的な存在です。 札幌軟石で造られたこの建物は、元の建物を一度分解した後にコンクリートで躯体を作り直し、再建されたものです。そのため、防音環境が充分整っており、今後は映画上映やパブリック・ビューイングでのスポーツ観戦といった使い方も視野に入れているそう。
    また、北海道の若手作家を紹介していく試みである「HUE Project(ヒュー プロジェクト)」の継続や「HUE Masters(ヒュー マスターズ)」と題して、北海道教育大学で過去に指導されていた作家の先生たち、大学卒業の作家やデザイナー、研究者などの作品を紹介する企画も計画中とのこと。

    今回は、現在「HUE Project」第一回目としての展覧会を開催中の美術家 東方悠平さん、HUGスタッフの南さんに今後のHUGの活動や公開制作中の展覧会についてお話を伺いました。

     

     

    ー「HUE Project」第一回目の試みとして東方さんを選んだ理由を教えてください。

     この場所は札幌軟石でできた建物で、HUGとして使われる前から地域の方々や歴史的建造物ファンの方の間では知られた存在で、そういった方々が建物を見にいらっしゃることも多いです。
    そのような普段はアートに触れる機会があまりない方々にも興味を持って頂けるような、わかりやすくユーモアをもった作品を見て頂きたいと思い、東方さんにお願いすることになりました。

     

    ー今回は完成形としての展覧会だけではなく、公開制作にしたのはなぜでしょうか?

     東方さんは作品における場所性を大切にしている作家だと思うので、このスペースでどういった展示ができるのかという可能性を探っていってほしいという期待と、作品が出来上がっていく過程を見せることでよりアートを身近に感じてもらえるのではと考えたからです。

     

     

    ー 展覧会のタイトル「Authentic Fabrication」の由来を教えてください。

    東方 <authentic>とは“真正の、信頼できる”といった意味で、<fabrication>は“偽造、でっちあげ”といった意味の単語です。
    本物と言われるものを否定してやろうというような斜めからの態度ではなく、絶対的なもののように思われる価値感や権威を前に、個別に判断することを放棄して、いわゆる思考停止になってしまった状態、そこに揺さぶりをかけるエクササイズのような展覧会を目指しました。
    そのための手段として、今回は札幌軟石を選びました。建材を扱った作品は以前から継続して制作していて、興味のあるモチーフの一つでした。

     

     

    ー建材への興味とはどういうものですか?

    東方 たまたま大学の授業で知った、「ヴァナキュラー建築」という言葉がきっかけです。
    例えば気候風土の特徴に合わせて工夫された形、その地域で手に入れやすい素材、昔から伝わる加工方法など、場所固有の特性によって培われてきた土着的な建築のことです。
    建材として鉄・セメント・ガラスにとって代わられる以前は、素材や形、技法の全てに、その場所だからこそ、という必然性があったのですが、現在はそれが失われつつあるということを知りました。
    自分が当時大学で専攻していた工芸にもそれを勝手に当てはめて、素材や技法の必然性のことなどを考えていました。それはその後、サイト・スペシフィックと呼ばれる、場所性が大事な構成要素とされる芸術作品への興味につながっていきました。
    特定の建材について考えるだけでも面白いコンテクストがたくさん見つかります。 例えば旧北海道庁赤レンガのようなレンガ造りの建物の普及は、日本が欧米の技術などを取り入れて近代化していく過程と重なるし、その後に何百年も経って、発泡スチロールでできたインテリア用のレンガが東急ハンズで売られていることについて考えると、何だか不思議な気持ちになります。
    札幌軟石についても、公開制作中に軟石について調べている方々がたくさん来られました。素材の特性や、建材として盛んに用いられていた当時のことなどを教えていただいたことは、少なからず作品にフィードバックされていると思います。

     

     

    ー作品のひとつであるゆるキャラも「Authentic Fabrication」の一環なのでしょうか?

    東方 そうですね。今回は「なんとなくなんせきくん」というキャラクターを作りました。実際に箱をかぶってキャラになることができる、いわゆる観客参加型作品です。
    ゆるキャラがそこら中に溢れている状況は、日本的なさまざまな問題を象徴しているように感じていて、これについても最近継続して取り組んでいます。

     

    ー展覧会の告知フライヤーでタイトルの下に書かれた「軟石を投じる?!」の意味を教えてください。

    東方 タイトルの「Authentic Fabrication」だけだとわかりにくいと思ったので、キャッチコピーみたいなつもりでつけました。

     昨年夏に札幌国際芸術祭で展示された島袋道浩さんの作品「一石を投じる」(日高の二風谷から運んできた巨石を札幌市北三条広場に置くという作品)は、道外から見た北海道・札幌への問いだと思いますが、それに対する北海道を拠点とした若手作家がどう応えていくのかという事を表してるんじゃないかと思います。

     

     

    HUE Project Vol.1/東方悠平:Authentic Fabrication - Sapporo
    会場 北海道教育大学 アーツ&スポーツ文化複合施設 HUG
    札幌市中央区北1条東2丁目4番地 札幌軟石蔵
    日程 2015年04月15日(水)〜2015年05月10日(日)
    時間 12:00 - 20:00 / 公開制作 4月15日(水)- 24日(金), 作品展示 4月25日(土)- 5月10日(日)
    休館日 火曜日

    詳しくはこちら

     

    東方 悠平/Yuhei HIGASHIKATA
    1982年生まれ、北海道出身。
    2006年 北海道教育大学札幌校 芸術文化課程美術コース 金属造形研究室 卒業。
    2008年 筑波大学大学院 芸術研究科 総合造形コース 修了。
    『第13回 岡本太郎現代芸術賞』に入選したほか、2011年には『神戸ビエンナーレ』の『しつらいアート国際コンンペディション』で奨励賞を受賞。個展やグループ展、海外でのアーティストインレジデンス等で積極的に活動している。見慣れたイメージをモチーフに、それぞれの意味や文脈を、ユーモアを交えて組み変えるような作品やプロジェクト、ワークショップ等を数多く手掛けている。
    http://higashikata.com/

     

    北海道教育大学 アーツ&スポーツ文化複合施設 HUG
    北海道札幌市中央区北1条東2丁目4番地 札幌軟石蔵
    tel.011-300-8989
    営業時間 12:00〜20:00 火曜日定休
    web:http://www2.hokkyodai.ac.jp/iwa/user/?uid=h_universal_gallery
    Facebook:http://www.facebook.com/h.universal.gallery

     

    -----

    インタビュー 小坂祐美子
    撮影 佐藤史恵
    写真提供 HUG

  • 札幌国際芸術祭の新しい拠点がオープン

    2014年7月19日から72日間にかけて札幌ではじめて開催された札幌国際芸術祭2014。ゲストディレクターに坂本龍一氏を迎え、市内18会場を舞台に64組のアーティストによる作品が展開された。札幌国際芸術祭は「都市と自然」を基本テーマに3年に1度、芸術監督を迎えて開催を予定しており、次回開催へ向けた活動の拠点として、雪まつり会場としても有名な大通公園の西端にある札幌市資料館内に、SIAFラウンジとSIAFプロジェクトルームの2室をオープンした。

    札幌市資料館は大正15年に札幌控訴院(今で言うところの裁判所)として札幌軟石を使って建てられた建造物で、1997年には国の登録有形文化財に選定された。その後、裁判所の移転に伴い札幌市資料館として開館。札幌の歴史を紹介するとともに、市民が利用できるレンタルギャラリーなどを併設し運用されている。今回その中の2室を札幌国際芸術祭の拠点とした形だ。

    札幌市資料館は札幌国際芸術祭2014でも会場の1つとして「SIAF2014 アクティビティ拠点プロジェクト」と銘打ち、インフォメーションセンターやカフェなどを設置。来場者が気楽に過ごせる空間とともに、深澤孝史によるとくいの銀行 札幌支店since1869/札幌市開開拓資料館や冨田哲司がコーディネートを努めたサッポロ・エホン・カイギなど来場者や市民が参加することで完成するアートプロジェクトが複数展開された。またボランティアセンター機能も有し、多くのボランティアスタッフが札幌市資料館を基点として動くなど、アーティスト・来場者・ボランティアが混ざりあう空間となっていた。

    こういった使い方を延長するかのように今回オープンしたSIAFラウンジとSIAFプロジェクトルームは、より多くの市民が札幌国際芸術祭に関心をもち、理解を深めるきっかけとなる場を目指してオープン。ここでの取り組みを通して、芸術祭の様々な担い手を繋ぐ拠点となることを目指している。

    札幌市資料館1FにオープンしたSIAFラウンジは過去の札幌国際芸術祭の記録や関連書籍が閲覧できるライブラリーを兼ね備えたインフォメーションセンター。札幌国際芸術祭の記録はもちろん、様々な芸術文化に関する書籍が所蔵されており、気軽に立ち寄り交流できるスペースとして機能する。wifiや電源も完備しているので簡単な打合せなどにも利用できる。2FのSIAFプロジェクトルームは、次回の札幌国際芸術祭へ向けてワークショップやレクチャーなどを実施、そこでの活動を披露する展示スペースとしても活用される予定だ。

    SIAFプロジェクトルームはプログラム実施時のみオープン。現在予定されているものでは7月4日・5日にここで行われるプログラムの解説と次回札幌国際芸術祭へ向けた展望について参加者と話し合う「SIAFパブリックミーティング」を開催予定だ。1FのSIAFラウンジは本日4月28日よりいつでも利用可能(9:00~19:00/月曜定休)。

    現代美術の祭典であるビエンナーレ(2年に1回)やトリエンナーレ(3年に1回)は、現在日本各地で行われている。横浜トリエンナーレやあいちトリエンナーレなどが有名だが、今年初開催されたPARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015や、先日2016年初開催が発表されたさいたまトリエンナーレなど、まさに1地方都市1芸術祭の勢いだ。

    フェスティバルが行われている期間は多くのアーティスト作品が並び、来場者や参加する市民も盛り上がりを見せるが、開催期間外はどの都市でも準備に当てられている。その準備期間で行われる取り組み如何によって、芸術祭がただの一過性の祭りになるのか、街の文化を育てていく存在となるかが大きく変わってくる。今回の札幌での取り組みが今後どのようになっていくのか、今後注目していきたい。

     

    レポート:カジタシノブ
    写真提供:創造都市さっぽろ・国際芸術祭実行委員会 国際芸術祭事務局
         photo by Erika Kusumi

  • 手に取る宇宙 Message in a Bottle 地上ミッション - モエレ沼公園

    3月14日(土)、モエレ沼公園内のガラスのピラミッドにて「手に取る宇宙 地上ミッション モエレ沼公園」が開催されました。子ども連れの家族や中高生など、若者の参加者が目立ったこのイベントの様子をお伝えします。

     

    「手に取る宇宙」とは、彫刻家・松井紫朗さんが代表提案者となり、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と協力して実施された、宇宙と地球を舞台にしたプロジェクトです。宇宙研究でもありアートプロジェクトでもあるその内容は、2つのミッションから成り立ちます。1つ目は、宇宙の空気/存在のかけらを細長いガラスのシリンダーに詰め込み、地球へ持ち帰るというもので、実際に2010年から2013年にかけて、国際宇宙ステーション「きぼう」の日本実験棟で実行されました。2つ目は、地球へ持ち帰った宇宙のかけらを、多くの人に手に取ってもらうという地上を舞台にしたミッションで、2014年、帯広市の「ごろすけ保育園」で初開催されました。その後は道内の美術館や高校、また奈良県の東大寺など、道内・全国各地で行われています。今回のモエレ沼でのイベントも、この地上ミッションの一つ。ガラスのピラミッドには、宇宙船のような白いドームが現れました。

     

    - ガラスのピラミッドに出現した、地上ミッションで使用するビニール製のドーム。松井さんと共に各地を巡っている。

     

    前半は、松井紫朗さんによるレクチャーが行われ、「手に取る宇宙」という壮大なプロジェクトの発想の源やそこに込めた思い、1度の失敗を経て2回目でようやく実現した宇宙でのミッションの様子などが映像付きで説明されました。

    松井さんは「内側と外側の境界」をテーマに、国内外の美術展や個展で精力的に立体作品などを発表し続けています。その作品たちの、見た目はどこかユーモラス。しかしじっくり見ていると「果たしてどこまでが内側でどこまでが外側なのだろうか?」「そもそも自分が今いる場所はどういう所なのだろうか?」と、空間に対する考え方や感覚が刺激される面白さが松井さんの作品の魅力です。

     

    -「宇宙のしっぽを掴んだと思ったら、プチンとちぎれてしまった。ガラスの中にはこの宇宙のしっぽが入っています。実際に行くことはできないけれど、その一部を掴んだら、自分も宇宙の一員になった気がしませんか?」と、イラストを使い説明をする松井さん。

     

    -ぬいぐるみやガラスケースを使い、自身のテーマである「内側と外側の境目」について説明中。子どもたちもすぐに理解できたよう。

     

    「手に取る宇宙」は、宇宙空間という一般の人ならば行くことのできない場所に行ってみたい、触れて確かめてみたいという想いが根本にあると松井さんは言います。宇宙そのものに触れることはできませんが、その境目になら触れることができると考えて、宇宙飛行士に依頼し、宇宙の一部をガラスシリンダーに入れて持ち帰ってもらいました。

    地球に持ち帰った後は、それをなるべく多くの人に手に取ってもらいます。宇宙の一部を手に取った時、今宇宙で活動している人々やかけがえのない地球、自分という存在など、たくさんのことを感じることができるからです。また、ミッションの参加者は感想を紙に書きます。その内容は一枚一枚映像として記録され、10年後や20年後の人々も見ることができます。その頃になると、人間と宇宙、地球と宇宙の関係は今と全く違っているかもしれませんが、人々が昔宇宙に対して抱いていた想いを知ることは、未来を創造していく上で重要なことかもしれません。「この一人ひとりの感想が未来へのメッセージとなってほしい」と松井さんは語ります。

    レクチャーにはガラスシリンダーの設計に携わったJAXAの職員も駆けつけ、宇宙服で作業することを考慮した設計や、1回目はシリンダーが壊れて失敗してしまったことなど、技術者の目線でプロジェクトの経過を振り返りました。

     

    - 国際宇宙ステーションで撮影された映像。宇宙飛行士が手にしているのは内側にガラスシリンダーが入ったケース。

     

    レクチャーの最後には参加者から松井さんやJAXA職員の方への質問コーナー。「アーティストが宇宙に行くことはできるのか?」という質問に対し、JAXA職員の方が「特殊な訓練を受けなければ宇宙へ行くことはできないので、今の段階ではアーティストが宇宙へ行くことは難しい。しかし宇宙の概念を人々に広く伝える時に、アーティストの果たす役割は大きい」と答えていたのが印象的でした。現在は地域おこしや教育など、多くの場所で芸術家が活躍していますが、宇宙という一見芸術とは関係の無さそうな分野でさえも、芸術が果たせる役割は確実にあるというのは興味深いことです。

     

    レクチャー後は白いドームが設置されたガラスのピラミッドの2階へ移動。いよいよ宇宙のかけらを手にする時間です。

    10人ほどのグループでドームの中に入り、松井さんの説明を受け、一人ずつ順番に宇宙のかけらが入ったガラスシリンダーを手にします。生まれて初めて宇宙の断片を手にすることの喜びや緊張、興奮や感動など、一人ひとり様々なことを思いながら手にしたことでしょう。

     

     

    ドームを出た後は、宇宙のかけら手に持った時の感想を紙に書きます。カラフルなイラストを書く人、長い文章を書く人、一言で全てを表す人、ポエムを書く人など様々です。

    そしてミッションはいよいよクライマックスへ。各自が感想を書いた紙を持ち、再びドームへ入ります。一枚ずつ感想を写真に撮り、一人ひとりのメッセージが宇宙の彼方へ飛んでいく映像を皆で見送りました。感想を書いた紙は、専用の筒に入れ、各々が家に持ち帰ります。「10年後や20年後、ふとした時に思い出して見てみてほしい」と松井さんは語っていました。自分の子どもや孫がメッセージを目にすることもあるかもしれません。

    ミッションの参加者の感想は、「手に取る宇宙」のホームページで見ることができます。今回の地上ミッションに参加できなかったとしても、この感想を見ることで、宇宙に触れた喜びを感じることができるはず。

     

    -宇宙へ飛んでいくメッセージを見送る参加者達。

     

    - 宇宙の映像を映すドームが、ガラスのピラミッドをいっそう幻想的な空間に。

     

    未知なるものに触れる喜びや好奇心、果てしない宇宙とかけがえのない地球への想い、未来を生きる人々へのメッセージ…など、幾重にも意味が込められたプロジェクト「手に取る宇宙」。今回はモエレ沼公園のガラスのピラミッドという、自然や空を見渡せる空間で行われたことで、参加した人々は宇宙と地球のつながりを一層強く感じたのではと思います。今後も地上プロジェクトは全国各地で開催していく予定。宇宙を手にした時、どんな感情が湧き出てくるのでしょうか。ぜひ、自分自身で確かめてほしいと思います。

     

    松井紫朗/Shiro Matsui
    彫刻家
    1960年奈良県天理市生まれ。
    1983年の初個展以来、多様な素材、ユーモアと理知を備えた独自の立体造形で、1985年には兵庫県立近代美術館の「ART NOW 85」展に選出されるなと、関西ニューウェーヴを担う若手のひとりとして注目を集める。
    1991年よりシリコンラバーを使った半立体、立体作品の制作を開始、ドイツをはじめ海外でも展覧会が開催される。
    1997年よりテント用の素材を使ったトンネル状の大作を発表、スパンデックスやリップストップと呼ばれるナイロン素材のバルーンを使ったサイトスペシフィックな作品を次々と展開。自然科学の原理を応用した作品等で、人間の知覚や空間認識に揺さぶりをかける。JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同実験では宇宙での庭作り(「宇宙庭」)や容器に詰めた宇宙空間の持ち帰り(「Message in a Bottle」)を試みる。
    2013年 札幌宮の森美術館で個展を開催。
    現・京都市立芸術大学教授
    http://www.shiromatsui.com/

     

    手に取る宇宙 Message in a Bottle 地上ミッション - モエレ沼公園
    日時:3月14日(土)16:00~18:30
    場所:モエレ沼公園ガラスのピラミッド スペース1・アトリウム2
    主催:公益財団法人札幌市公園緑化協会
    企画:札幌宮の森美術館+NPO法人 CAPSS
    協力:独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 / 株式会社インフォート / team茶室 / 京都大学学術情報メディアセンター / 森幹彦・元木環 / 京都市立芸術大学VD研究室 / 辰巳明久・松原仁 / Michael Whittle / Charles Worthen / 札幌市中央図書館
    http://www.m-in-a-bottle.org/

     

    レポート:山内絵里
    撮影:佐藤史恵